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経理のキホン

収益と費用の計上時期の原則を再確認しよう(下)

[ 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士)]

商品や役務を提供した際、売上や費用をいつの時点で計上するかは迷うところ。しかも、売上の繰延と費用の前倒しは、「期ズレ」として税務調査でも必ずチェックされる項目です。収益と費用の計上時期について、改めて原則を確認しておきましょう。

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費用を計上するのはいつの時期か

 費用は、「発生主義」により認識します。

 費用は、その支出(または将来の支出の確定)に基づいた金額を収益に対応(個別対応または期間対応)させ、その「発生」した期間に正しく計上します。

 ここでの発生とは、財貨を費消(使い果たす)したり、役務提供を受けたりすることをいます。

 費用は、収益と対応させて認識することが求められています。そのため、売上原価は収益と個別対応させて認識し、販売費及び一般管理費や営業外費用等は事業年度内に発生したものを費用認識します。

 収益との対応が求められるということは、「支出や将来の支出の確定が当期に生じていても、当期の費用になるとは限らない」ということになります。

 たとえば、商品を仕入れても、その商品が当期中に販売されなければ、期末商品棚卸高として、来期以降の売上原価(つまり、費用)となります。

 また、前期以前に購入していた有形固定資産の減価償却費は、償却計算に基づいて当期の収益に対応して、あるいは期間に応じて当期の費用として計上されることになります。

費用であっても損金にならないもの

 税務上は、損金の計上において、発生主義ではなく「債務確定主義」が適用されます。多くの費用項目については、費用の発生時にはその支払債務も確定しています。

 しかし、従業員の労働により生じる将来の賞与や退職金の支払いに関する負債である賞与引当金や退職給与引当金、固定資産等の使用に伴う修繕引当金などは、それらの支払時期が到来するまで債務として確定していません。

 そのため、これらの繰入額は費用ではあっても、損金にはなりません。

 法人税額の計算は「確定決算主義」で、基本的には一般に認められた会計原則に基づく決算の損益を基本に課税所得を計算しますが、費用と損金の範囲が一致しない場合には、申告書のなかで調整を行います。

▼関連ページ
収益・費用の計上時期をめぐる経理処理の留意点(月刊「企業実務」2015年5月号)
収益と費用の計上時期の原則を再確認しよう(上)
著者 : 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士) 公認会計士・税理士。佐久間税務会計事務所所長。1986年、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。同年、公認会計士二次試験合格、大手監査法人に入所し、株式公開準備企業の監査等に従事。監査法人退職後、佐久間税務会計事務所を開設。中小・中堅企業の会計・税務の業務のほか、成長企業の公開準備支援などを行う。
http://www.sakumakaikei.com/
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