企業実務オンライン > 人事・労務 > 賃金・人事制度 > 「長時間労働」「サービス残業」は時代遅れ!ブラック企業化を防ぐ効果的な時間外労働抑制のポイント

やってはいけない会社の人事 第8回

「長時間労働」「サービス残業」は時代遅れ!
ブラック企業化を防ぐ効果的な時間外労働抑制のポイント

[ 河西知一(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 代表取締役社長)、小宮弘子(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 取締役)]

団塊の世代が新入社員だった1970年代以降、高度成長の波にのり、賃金も毎年20~30%くらいずつ上昇するような“浮かれ景気”が続きました。当時は「モーレツ社員」が最も好まれ、会社や駅の階段は駆け上り、時間外労働なんて当たり前。100時間どころか、150時間超の人も結構いたのです。しかし今ではそうはいきません。ブラック企業の烙印を押されないためにも、早急な時間外労働の抑制が必要です。

あなたの会社は大丈夫?時間外労働抑制度チェック!

 時間外労働は、上司からの命令とそれに対する社員からの事前申請があって初めて成立します。次に挙げる項目について、もう一度きちんと確認し、当てはまるものがあれば早急に改善していきましょう。

チェックその1 中間管理職への教育をきちんと行っているか?

 時間外労働が命令や申請を必要とするのであれば、まず命令を下す管理職への教育が絶対に必要となります。

 そもそも管理職が部下の作業の質や量を把握できていないという問題があるからです。部下の把握ができていないのに評価だけは行われるため、申請制度の創設に取り組んでいても、結局、事後申請が通用してしまうのです。

チェックその2 社員に1か月の時間外労働の累計を把握させているか?

 時間外労働の申請書には、各社員の当月の累積を記載しておきましょう。つまり、社員自身が1か月あたりの時間外労働を常時把握することが必要なのです。「気づいたら100時間残業していた」ということのないように努力しましょう。

チェックその3 時間外労働は事前申請・許可方式になっているか?

 時間外労働が社員個人の判断で実行されているようでは、本格的な抑制は実現しません。法的には問題がありますが、「時間外命令がなく事後申請だけの場合には、時間外割増賃金は支給しない」くらいの強い覚悟が必要となります。

 まずは申請・許可制度をもう一度確認します。事前申請制度を導入しても時とともに形骸化してしまう事態は絶対に避けなければなりません。時間外労働の判断を労働者に委ねてはいけないのです。

チェックその4 ノー残業デーはあるか?

 総務・人事が率先してノー残業デーを復活させることは、時間外労働抑制に非常に効果があります。ただこれも油断していると、いつでも形骸化する恐れがあります。

チェックその5 物理的に時間外労働をできなくしているか?

 たとえば、毎日一定の時間に消灯をします。全労働者への意識付けには効果があります。某社では、社長みずからが電灯を消して歩いて徹底した例もあります。物理的に時間外労働ができなくするほどのことを考慮する時代です。

チェックその6 社長や役員が率先して取り組んでいるか?

 会社のトップにも率先して時間外労働抑制に参加してもらいます。社長の中には、「遅くまで働いてくれる者はありがたい」という発想を持っている方がたくさんいますが、大きな間違いです。これでは時間外労働は減少しません。

チェックその7 1日あたりの労働時間調整ができるか?

 仕事は生き物ですから、突発的にやらざるを得ない仕事が飛び込んでくることもあります。そのような事情で所定労働時間をオーバーした日がある場合には、翌日には遅い時間に出社するなど、勤務時間の調整が可能となるよう就業規則に明記しておきます。

チェックその8 生活残業を容認していないか?

 中には生活費のために時間外労働をする社員の方もいるでしょう。ある会社では、時間外労働抑制を強力に推し進めたところ、「時間外ができないなら他社でアルバイトすることを認めろ」という本末転倒な意見も出たといいます。事情は察しますが、やはり生活残業は時間外労働を常態化させてしまい、望ましくありません。

 対処方法としては、全社会議や掲示板、社内メールなどで注意をすると一気に減少します。業務量は変化せずに定時退社を実現できた例もあります。

チェックその9 帰社時間を一番遅い社員に合わせていないか?

仕事を終えるのが最後となる社員を待つことで、結局全員の帰りが遅くなる部署も実在します。これも、仕事が終わった人から帰社するように指摘すると改善されることがあります。

チェックその10 早く帰りにくいムードになっていないか?

 「みんなが残業をしているのに自分だけ帰りにくい」というのは、新人などによくある心境です。上司のほうからそんな必要は全くないことを強く指導するとともに、帰りにくい雰囲気をつくらないよう気をつけましょう。

チェックその11 時間外労働に対するペナルティーを設定しているか?

 部署単位で予算管理を徹底できる会社であれば、時間外労働をコストとして認識し、ペナルティー化を検討しましょう。時間外労働の多い部署では、賞与が減額されるようなシステムとし、効果的に時間外労働の抑制を図りましょう。

▼連載「やってはいけない会社の人事」

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著者 : 河西知一(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 代表取締役社長) 大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。
http://www.tomscons.co.jp/
著者 : 小宮弘子(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 取締役) 都市銀行にて外為業務、人事総務業務に従事し、資格取得後、トムズ・コンサルタントに入社。 「人」に関するスペシャリストとして、分野を問わずにマルチに活躍。労務相談業務を中心に人事制度改定や就業規則改定等、幅広く活躍。その他セミナー講師等としても活躍。著書に『法律家のための年金・保険』(新日本法規)
http://www.tomscons.co.jp/
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