ハラスメントのない職場づくりの推進等を図るため、労働施策総合推進法等が改正されました。今回の改正のポイントは次のとおりです。
ハラスメント対策強化
カスタマーハラスメントや、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務付けられます。カスタマーハラスメントとは、次の3つの要素をす
べて満たすものとされています。
(1) 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行なうこと
(2) 社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
(3) 労働者の就業環境を害すること
事業主が講ずべき具体的な措置には「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」「相談体制の整備・周知」などがあり、その内容などは今後、指針等で示される予定です。
また、求職者等に対しても、セクシュアルハラスメントを防止するための必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
こちらも具体的な内容などは今後指針等で示される予定です。
女性活躍のさらなる推進
来年3月31日までとされていた女性活躍推進法の有効期限が、2036年3月31日まで延長されます。
これまで従業員数301人以上の企業が対象とされていた「男女間賃金差異」の公表義務が101人以上の企業に拡大されます。「女性管理職比率」についても、従業員数101人以上の企業に公表が義務付けられます。
プラチナえるぼし認定の要件に、「事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していること」が追加されます。
女性の健康上の特性による健康課題に関して、職場の理解増進や配慮等がなされるよう、企業の取組例を示し、事業主による積極的な取組みを促していくこととされています。
本改正は一部を除き、公布の日から起算して1年6か月以内の政令で定める日から施行されます。
メンタルヘルス対策の推進
これまで努力義務とされていた労働者50人未満の事業場についてもストレスチェックが義務付けられました。
(令和7・5・14法律第33号=労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律)
リチウム電池の管理規制
蓄電池製造等を行なう取扱所の位置、構造、設備の基準に係る規定の整備など、リチウムイオン蓄電池の取扱い等に係る規制が見直されました。
(令和7・5・14政令第191号=危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令)
動産担保の活用に向けた整備
動産や債権等を目的とする譲渡担保契約および所有権留保契約の効力について明文化するなど、動産や債権を担保として利用する際の法的構成が明確化されました。
(令和7・6・6法律第56号=譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律 ほか)
運送事業の規制強化
一般貨物自動車運送事業の許可の5年ごとの更新制の導入、運送委託次数を2次請負内に制限する努力義務など、運送事業に対する規制が強化されています。
(令和7・6・11法律第60号=貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律 ほか)
公益通報者保護に刑事罰を導入
事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上等の観点から、公益通報を理由として解雇・懲戒をした者に対して刑事罰を導入するなどの措置が講じられます。
(令和7・6・11法律第62号=公益通報者保護法の一部を改正する法律)
アスリートの尊厳を守る
暴力、盗撮を含む性的な言動や誹謗中傷等への対策を、国および地方公共団体に求めるなど、スポーツ基本法が改正されます。
(令和7・6・20法律第71号=スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律)
年金制度の見直し
パートタイマーを対象とする企業規模要件の段階的撤廃による被用者保険の適用拡大、在職老齢年金や遺族年金の見直しなど、社会経済の変化をふまえて年金制度が見直されます。
(令和7・6・20法律第74号=社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)