女性の職場進出が広がるとともに、妊娠中や出産後も働き続ける女性が増加しています。
職場において母性や妊産婦の健康が尊重され、女性が安心して働き続けられる雇用環境を整備していくことは、今後の重要な課題のひとつです。
このような課題に対処するための法律が整備されてはいるものの、中小企業の場合、なかなか適切な措置が講じられないケースも見受けられます。そこで本稿では、実務担当者として知っておくべき母性健康管理等について、Q&A形式で解説していきます。
母性保護についての基本的な考え方
「母性保護」とは、どういう意味か?
女性は、妊娠、出産、哺育という特有の母体機能をもっています。
こうした生理的・身体的な特質に基づき、職場において女性を特別に保護する措置を総称して、「母性保護」といいます。
女性労働者が妊娠すると、母体や胎児の健康を守るため、一定の「母性健康管理」が事業主に義務付けられています。
妊娠中の女性労働者が、健康診査のために会社を休みたいと申し出たときはどうしたらよいか?
男女雇用機会均等法 12 条では、妊娠中および産後 1 年を経過しない女性(以下、「妊産婦」といいます)について、保健指導または健康診査を受診するために必要な時間を確保しなければならない、と定められています。
対象となる健康診査等とは、妊産婦本人に行なわれる産科に関する診察や諸検査と、その検査結果に基づいて行なわれる個別の保健指導をいい、一般の健康診断とは異なります。
女性労働者から申出があったときは、勤務時間のなかで、健康診査等を受けるための必要な時間を与えなければなりません。
妊娠中、受診のために確保しなければならない回数も、図表1 のとおり定められています。
これは就業形態を問わず、パートタイマーや期間の定めのある労働者(期間雇用者)、派遣労働者等についても措置の対象に含まれているので注意が必要です。
通院休暇等の与え方や賃金の取扱いはどうすべきか?
健康診査等を受診するために必要な時間の付与方法や賃金の取扱いについては、労使で話し合うことが望まれます。
勤務時間の短縮や休憩、休業によって実際に勤務しなかった時間についても同様です。ただし、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から、勤務しない時間分について賃金を支払わなくても違法ではありません。
個々の労働者によって、通院する医療機関と勤務地が遠かったり、診察時間も一定ではなかったりするので、通院に要する時間については、1時間単位、半日単位など、融通をもたせることが望ましいでしょう。
受診する日は、原則として女性労働者が希望する日(医師等が指定した日)とします。
事業主が、通院日を会社の休日や女性労働者の非番の日に変更させることはできません。また、休日以外の日を指定する申請を拒否することもできません。
業務の都合により、やむを得ず通院日を変更させるときは、変更後の通院日は原則として女性労働者本人が希望する日とするなどの配慮が求められます。