【本書の紹介】
『課税判断から印紙税額の計算まで
事例でわかる印紙税の実務』
A5判並製256ページ 頒価2,500円(税別)
様々な契約書や受取書に貼る「印紙」。身近な税金ながらその仕組みはとても複雑で、契約書を前にして「印紙が必要なのか、よくわからない」と悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。
本書は、印紙の貼り漏れ&貼り過ぎを避けたいという人のために、ビジネスでよく交わされる契約書等を例にとり、課否判断のポイント、税額計算の仕方を解説しています。
そもそも印紙税って何? というところから知りたい方はステップ1〈印紙税の基礎知識〉へ。どんな契約書に印紙がいるのか、いくら貼ればいいのかを知りたいという方はステップ4〈契約書例で見る印紙税の判断ポイント〉へ。誰が読んでも、どこから読んでも役に立つ、印紙税実務の入門書です。
印紙税は「文書」に課税される
「収入印紙」を知らないという方は、まずいないでしょう。5万円以上の領収書や、不動産の売買契約書などに貼る切手のような形をしたものです。これを文書に貼付することで、私たちは印紙税を納税します。
ところで、領収書や不動産の売買契約書に印紙を貼る〈理由〉をご存知ですか?
5万円以上の領収書に印紙を貼るのは、なにも5万円以上の高額な商品を売ったからではありません。不動産の売買契約書に印紙が必要なのは、不動産を売買したからではないのです。
印紙税は、「モノを売ったり、サービスを提供したり」という商行為にではなく、領収書や契約書などの「文書」それ自体に課税される税金です。その文書の作成者やそこに書かれている内容によって、課税文書かどうかを判断します。
契約書や社内外の文書にかかわる仕事をされている方は、そこのところをぜひ覚えておいてください。
印紙税の課税ルールは非常に複雑で、税金のプロである税理士や公認会計士であっても、誰もが印紙税に精通しているとは限りません。
じつは税理士試験や公認会計士試験において、「印紙税」の科目は存在しません。そもそも税理士法において、印紙税は税理士の職務から外されているのです。
「○○に印紙はいらない」は本当か?
筆者は、会計事務所の方や企業の総務・経理部門の方らを受講生に実務セミナーの講師をすることが多いのですが、特に印紙税については熱心な受講生の方からいろいろな質問を受けます。そこで感じるのは、印紙税に関して、間違った〈思い込み〉をしているケースが結構多いということです。
いくつか例を挙げてみましょう。
●公益法人との契約書に印紙はいらない?
ある会社の経理課長さんは、公益法人との契約に印紙はいらないと思い込んでいました。
印紙税法において、「国、地方公共団体または別表第2に掲げる者が作成した文書」は非課税文書とされています。しかし、民間企業が作成した契約書は、相手が「国、地方公共団体または別表第2に掲げる者」であっても印紙を貼る必要があります。
しかも、公益法人だからといってすべてが「国、地方公共団体または別表第2に掲げる者」に該当するわけではありません。
●オフィスビルの賃貸契約書には印紙が必要?
これは意外に勘違いされている方が多いようです。
契約書に印紙が必要になるのは土地を賃貸借する場合です。オフィスビルなど建物の賃貸借に印紙税はかかりません。
たとえば、駐車スペースとして更地を借りるときは土地の賃貸借になるので印紙税がかかります。しかし、車庫を借りる、駐車場を借りるなど「施設」の賃貸借契約であれば、印紙税はかかりません。
●弁護士との顧問契約書に印紙は必要ない?
これは半分正しく、半分は間違っています。
弁護士と顧問契約を結ぶとき、その内容が法律相談や契約書のリーガルチェックであれば、契約書に印紙を貼る必要はありません。しかし、顧問契約の内容に文書の作成などが含まれている場合は、「請負契約」となって印紙が必要になります。
こうした間違った〈思い込み〉は、いずれも印紙税についての知識が中途半端であることに原因があるように思われます。
しかし印紙税は、「契約相手が○○なら印紙はいらない」とか、「△△契約書なら印紙がいる」というような単純な仕組みではありません。もし、あなたが職場の先輩から「○○に印紙はいらないよ」と教えられたときは、〈どうしてこのケースでは印紙がいらないのか?〉ということをぜひ確認してみてください。
何事もそうですが、小さな疑問をスルーせず、自分でしっかり確認する習慣を身につけることが、デキるビジネスパーソンへの近道になるはずです。
- ▼連載「知っているようで意外に知らない!印紙税の入門ゼミナール」