3月10日、最高裁判決で「外れ馬券の購入費が、的中馬券の払戻額の経費と認められる」と示され、世間の注目を集めました。
被告となった男性は、2005 年から自作の競馬予想ソフトを使って日本中央競馬会のほぼ全レースの馬券をインターネットで購入。3年間で約 28 億 7,000 万円の馬券を購入し、約 30 億 1,000 万円の払戻金を得ていました。裁判では、この払戻金が「一時所得」と「雑所得」のいずれにあたるかという点が争われました。
一時所得と雑所得では、税務上の扱いに大きな差があります。
たとえば、
総額 100 万円分の馬券を購入し、そのうち 10 万円分の馬券が的中して 100 万円の払戻金があった
としましょう。
雑所得の場合、外れ馬券の購入額も経費にできるため、
● 払戻金 - 馬券購入総額 = 収入0円
となり、税金は発生しません。
これが、一時所得になると、「収入を得るのに直接要した金額」のみが経費にあたるので、
● 払戻金 - 的中馬券の購入総額 = 収入 90 万円
となり、ここから特別控除 50 万円を差し引いた額の2分の1(20 万円)に対して課税されます。
これまで馬券の払戻金は一律、一時所得として取り扱われてきましたが、今回のケースでは、「資産運用の一種」と認められるほど継続的かつ大量に購入していた点が指摘され、雑所得と判断されました。結果、無申告の所得税額は 5 億 7,000 万円ではなく、5,200 万円とみなされ、実に 10 分の 1 の税負担で収まったのです。
今後も、判決と同様の購入態様・規模等により得た払戻金は雑所得となりそうですが、一般の競馬ファンが通常楽しむ程度では、一時所得となり、外れ馬券が経費と認められることはありません。
くれぐれも誤解のないように…。