
Facebook、Twitter、LINEなどのソーシャルメディア、いわゆるSNSが普及しています。
SNSは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の頭文字をとった略称で、インターネットや携帯回線を通じてオンライン上で不特定多数の人が交流を図るサイトの総称です。
積極的であれ、消極的であれ、企業はSNSと向き合わなければならなくなりました。積極的にSNSを活用するつもりがなくとも、企業イメージを守るためにSNSに無関心ではいられません。
SNS活用の目的を明確にする
そもそも企業が何のためにSNSを運用するのかが明確でないと、担当者は何をすればよいのかがわからなくなってしまいます。
SNSは、何となく運営しても手間がかかるだけです。
そこで、まず企業がSNSを活用する目的を確認します。大別すると、図表1 の4つのどれかということになるでしょう。
図表1 企業のSNS活用の目的
| |
目的 |
関与の積極性 |
| 1 |
企業のマーケティング活動の一環 |
積極的・攻め ↑ ↓ 消極的・守り |
| 2 |
企業としてのPR |
| 3 |
企業のブランディングに貢献すること |
| 4 |
SNS上の情報をパトロールすること |
このうち、最も積極的な攻めの活用は、「企業のマーケティング活動の一環(売上増加に貢献すること)」です。この場合の担当部署は、営業やマーケティング部門が一般的です。「企業としてのPR」に関しても、その目的が広告宣伝や販促的なものならば営業部門が担当になるのが一般的です。
「企業のブランディングに貢献すること」や「SNS上の情報をパトロールすること」については、中長期的な取組みが必要です。消極的な守りのSNS活用であるパトロールが目的の場合、総務部門が担当することが多いようです。
SNSは感情に左右される媒体だと認識する
SNSのメリットとデメリットを把握しておきましょう。
まず、SNSを個人利用した場合のメリットとデメリットについて理解を進め、そのうえで企業が利用する場合について検討するとよいでしょう(図表2 参照)。
図表2 SNS活用のメリットとデメリット
| 個人利用 |
メ リ ッ ト |
・価値観を共有する人間との交流に有効 ・顔出し実名だと建設的な意見交換が生まれやすい ・ネット上の名刺的な活用で、人脈を紹介する際の起点になる ・情報更新のたびに告知がされ、交流の頻度が向上する ・交流の輪が広がるなど、楽しいと感じることが増える ・無料または安価で気軽に利用でき、使うシーンを選ばない |
デ メ リ ッ ト |
・交流範囲が友人に限定されるSNSは議論が深まらない ・発言が検索結果に表示されないSNSだと、広くアピールしたくても効果は限定的 ・基本的に個人情報の登録が必要 ・公開範囲の設定など個人情報の管理に気を遣う ・習慣的に利用する癖がついてしまう |
| 企業利用 |
メ リ ッ ト |
・安価に開設・運営できる ・ユーザーや潜在顧客とのコミュニケーションを図れる ・SNSを運用すると炎上の可能性が低くなる ・ポジティブな反応が期待しやすく、イメージ向上や採用に有利 ・キャンペーン告知、マーケティング利用に効果的 ・中長期的にブランディング強化につながる |
デ メ リ ッ ト |
・営業時間外対応や長時間対応があると担当者の負担が重い ・顔出し実名公開は反応を得やすいが、認知された担当者の異動や退職があると後任がやりにくい ・担当者個人と企業のアカウントの使い分けが望ましいが、運営が煩雑になる ・効果測定がしにくい |
SNSは大別すると 図表3 の5種類があります。このなかのどれを選択し、どのように活用するかがポイントですが、いずれにしても、企業がSNSをビジネスとして活用することに関して、重要なスタンスがあります。
それは「感謝」というマインドを持つことです。SNSは人を媒体として情報が伝わるという特性があり、企業がSNSにアプローチするときは微妙なさじ加減が必要です。そのため、でしゃばった情報発信とみなされると嫌われる傾向があります。
図表3 SNSのタイプと特徴
| ① 情報発信型SNS(ブログなど) |
| アメブロやライブドアブログのような無料のブログサービスも利用できるが、他社の広告が掲載されるのを避けるため有料サービスにする場合もある。レンタルサーバを契約し、WordPressなどで運営する独自ドメインのビジネスブログも多い |
| ② 交流系SNS |
| 登録会員同士の情報交換や意見交換ができる。Facebookの「いいね!」やTwitterのRT(リツイート)は、該当発言の人気を数値で”見える化”でき、人気記事のバロメータになる。利用者が増加しつつあるGoogle+は検索結果に表示されやすくなるSEO(検索エンジン最適化)の観点からの利用価値が高い |
| ③ メッセージ系SNS |
| 登録した会員同士でメッセージやスタンプをやりとりする。交流系SNSに比較すると、やりとりのスピードが速くリアルタイムに近い。最近ユーザーが増加しているLINEが代表格 |
| ④ 写真系SNS |
| お気に入りの写真を共有するなど、画像を中心にコミュニケーションを図る。Facebookと連携を強化したInstagram、女性のユーザー層が多いとされるPinterestなど |
| ⑤ 動画系SNS |
| 動画を投稿(共有)し、会員同士がコミュニケーションを図る。Googleが運営するYouTubeがメジャー。ニコニコ動画(一部有料制)は、動画上に臨場感あるコメントをつけ、共有感を高める。リアルタイムで動画配信できるUstreamではTV番組のような構成にしたり、セミナーを動画配信したり、独自の動画配信が可能 |
SNSで自社の商品やサービスのよさについていくら情報を発信しても、お客様の共感が得られない限り、購買行動やブランドの構築には結びつきません。
SNSで情報を共有し、共感を得るというプロセスを経ない限り目的は達成できないからこそ、お客様、関係者、地域社会に「ありがとう」という気持ちを持って運営することが、共感を得ることにつながります。
また、企業としてSNSの目的を達成するためにはどのような運営組織でどのような体制にするかが重要です。そこで経営者層が最終責任を取るしくみが必要で、中小企業なら社長をトップとした運営体制を構築することが、重要な成功要因になります。SNSでアカウントを持つということは、自前の放送局を持つようなものです。企業の代表が責任を持って運営するという姿勢が見えてこそ共感を生みます。
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↓
消極的・守り