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経理のキホン

収益と費用の計上時期の原則を再確認しよう(上)

[ 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士)]

商品や役務を提供した際、売上や費用をいつの時点で計上するかは迷うところ。しかも、売上の繰延と費用の前倒しは、「期ズレ」として税務調査でも必ずチェックされる項目です。収益と費用の計上時期について、改めて原則を確認しておきましょう。

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収益を「認識」するのはいつの時点か

 収益は、その「実現」により「認識」して計上します。
 収益の実現とは、商品の「引渡し」が行われ、その対価について、現金や売掛金など(現金等価物)が取得されることをいいます。

 引渡しとは、一般的に「出荷」であると考えられています。
 出荷は社内で把握できる事実なので、売上計上を行ううえで、処理の確実性があるためです。

 IFRSなどでは、引渡しや現金等価物の取得についてより厳格にとらえていて、客先への物品の到着や検収(注文した際の品質条件・数量・仕様に合っていることを確認して受け取ること)の完了が必要だと考えられているようです。

 しかし、このあたりは業種によっても事情が異なるため、出荷から検収までの何らかの時点を実現として、継続的に運用すればよいと思われます。

収益の実現主義の例外

 収益は、基本的には実現主義により認識しますが、例外もあります。

図表1 収益の実現と例外
図表1 収益の実現と例外

 たとえば、橋りょうや造船などでは、受注から完成・引渡しまで数年かかることがあります。この間、まったく売上計上できず、損益が平準化できないのでは不合理です。

 そこで、長期の請負工事などでは、工事の進行割合に応じて収益を認識することがあります。

 また、こうした取引では、工事の着手時や中間時点で売上代金の一部の入金があることから、分配可能な利益が発生したと考えて、工事の進行割合に応じて収益を認識することが認められてます。

 そのほか、割賦代金などの入金時に収益を認識する回収基準などもあります。

 こうした収益の認識基準が継続してルールどおりに行われているか否かは、損益や課税所得を計算するうえで、きわめて重要です。

 法人税法でも収益の実現の時点は重要であるため、法人税基本通達により、各種の例示がおかれています。

図表2 販売形態による収益認識時点の例
図表2 販売形態による収益認識時点の例

 様々な業種、業態の特性に応じて引渡しの日の判断基準が例示されていますが、収益の計上にあたっては、これらを継続的に適用していくことが重要です。

▼関連ページ
収益と費用の計上時期の原則を再確認しよう(下)
収益・費用の計上時期をめぐる経理処理の留意点(月刊「企業実務」2015年5月号)
著者 : 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士) 公認会計士・税理士。佐久間税務会計事務所所長。1986年、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。同年、公認会計士二次試験合格、大手監査法人に入所し、株式公開準備企業の監査等に従事。監査法人退職後、佐久間税務会計事務所を開設。中小・中堅企業の会計・税務の業務のほか、成長企業の公開準備支援などを行う。
http://www.sakumakaikei.com/
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