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Taxマインドの磨き方 第3回

贈与税に落とし穴!子供名義で親が内緒で積み立てた預金は誰のもの?

[ 森 大志<もり・たいし>(税理士)]

税法を理解することは、法律の専門家でも難しいといいます。ましてや会社で総務や経理を担当している人の多くは法律に関してはズブの素人。税実務において、しばしば判断に迷うことがあるのも当たり前でしょう。そこで本連載では、「税の考え方」のポイントについて解説します。

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贈与税の基礎控除内で積み立てた「子供名義の預金」に税金が…

 さて、子供名義の預金は「誰のもの」でしょうか——?

 おそらく多くの方が、こう思っているでしょう。

「子供名義の預金なんだから、子供のものに決まっている!」

 ところが、法律のうえではそうとも限らないのです。

 10店の飲食店を経営するAさんは、子供B名義の普通預金口座を作り、Bには内緒で、毎年決まった額をBへの「贈与」として入金してきました。贈与税の基礎控除は110万円ですから、100万円を10年間にわたって、通帳に記録が残るようにして振り込みます。

 昨年8月の時点で金額が1,000万円になったので、Bに贈与の事実を話し、通帳と印鑑を渡しました。

 最近になってAさんの会社に法人税の税務調査が入りました。その時、飲食店は現金商売なこともあり、国税調査官から、社長であるAさんの個人名義の普通預金通帳の提示を求められました。

 その際に、Aさんの通帳から毎年100万円を子供であるBさんに振り込んでいる事実を調査官から指摘されました。

 Aさんは、子供Bへの贈与として毎年100万円を振り込んでいたこと、昨年の8月に贈与の事実を明かし、通帳と印鑑をBに渡したことを説明しました。

 それを聞いた調査官は、昨年の8月にAさんからBへ1,000万円の贈与があったと認定し、後日、Aさんは贈与税の申告漏れを指摘されました。

本人が知らずにもらっていた財産は「贈与」にならない

 Aさんは、贈与した記録が残るように、わざわざ銀行口座に振り込んでいたのに、なぜ申告漏れを指摘されたのかわかりませんでした。基礎控除額は110万円ですから、年間100万円の贈与であれば非課税になるはずです。

 はたして何が問題だったのでしょうか?

 民法では、贈与について次のように規定されています。

民法549条

 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 Aさんの例で考えますと、Bは、AさんがB名義の口座に毎年100万円振り込んでいることを知りませんでした。そのため、相手方であるBが贈与を受諾したのは、昨年の8月にAさんが通帳と印鑑をBに渡した時になるとみなされたのです。


ワンポイントレッスン

内緒の贈与はダメ!

 贈与には「意思の合致」が必要です。贈与をするときはお互いの意思を確認し、その証拠として贈与契約書を作成することが望ましいでしょう。
 そのうえで、贈与契約書の内容に基づいて、記録が残る方法(銀行振込など)で贈与します。また、贈与契約書は2通作成し、確定日付を付け、両者が保存します。

▼連載「Taxマインドの磨き方」
著者 : 森 大志<もり・たいし>(税理士) 専修大学法学部卒業。平成元年、森会計事務所(森大志税理士事務所)開設。「中小企業経営者を応援したい」という思いからスタートしたブログ「税理士森大志(もりたいし)のひとりごと」がネット界で一躍有名となり、「ジャパンブログアワード2008」のビジネス部門グランプリを受賞。
http://www.tabisland.ne.jp/aoinfo/kanto/mori/
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