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Taxマインドの磨き方 第9回

個人事業者の接待交際費に「限度額がない」は本当?

[ 森 大志<もり・たいし>(税理士)]

税法を理解することは、法律の専門家でも難しいといいます。ましてや会社で総務や経理を担当している人の多くは法律に関してはズブの素人。税実務において、しばしば判断に迷うことがあるのも当たり前でしょう。そこで本連載では、「税の考え方」のポイントについて解説します。

個人事業者の接待交際費に「限度額がない」は本当?

「限度額がない」のと「何でもOK」は違う

 政治家の公費の使い方をめぐっては、しばしば「公私混同ではないか」との指摘がされます。

 特に最近は、家族での旅行や飲食費を公費で支払っていたことが問題視されていますが、これによく似ているのが、個人事業者の「接待交際費」でしょう。

 企業の場合、損金算入できる交際費等には限度額が定められていますが、個人事業者の場合、必要経費にできる接待交際費に限度額はありません。
 ですので、個人事業者の方の中には、

「接待交際費という名目であれば、自由に使える」

 と思っている人も多いようです。

 しかし、もちろん「限度額がない=なんでもOK」ではありません。まず、企業と個人事業者の「接待交際費」について確認しておきましょう。

 法人税において「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。(措置法通達61の4(1)-1)

 すなわち企業の場合は、事業に関係ある者等に対して、接待や供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出される費用が幅広く「交際費等」として認定されます。
 そして、政策上の観点から、損金に算入できる交際費等に限度額を設けているのは、ご存じの通りです。

 いっぽう個人事業者においては、支出された接待費や交際費が事業活動と直接の関連を持ち、業務の遂行上直接必要であった場合に、必要経費とすることができます。

接待交際費が「必要経費」と認められるための条件

 企業は営利を追求することを目的に事業活動を行うため、事業遂行上の支出は原則として「損金」と認められるのに対して、個人には事業者しての顔と、消費者である個人(プライベート)としての顔の2つがあります。

 税では公私混同を認めませんから、プライベートの部分は家事関連費(個人的な費用)として、事業上の必要経費と分離しなければなりません。

 つまり、接待交際費が必要経費として認められるには、①事業活動と直接の関連(家族旅行のついでに会議を行ったということではなく、事業のための接待目的で取引先と飲食を行ったというように)を持ち、②業務の遂行上直接必要(事業のためにその支出が必要だという関連性)であることが求められます。

 ですから、基本的にたんなる交際費は「個人的なつき合い」として必要経費とは認められません。必要経費として認められるのは、得意先、仕入先その他の事業に関係ある者に対する支出に限られるのです。

 たしかに個人事業者の接待交際費に限度額はありませんが、接待交際費として支出した相手方、内容等について厳格に判断すれば、必要経費に算入できる額は自ずと限られてきます。

 また、当然ですが、売上と経費のバランスもありますから、売上に比べて接待交際費が多い場合は、必要経費への算入が認められないこともあります。事業活動であるなら、当然、費用対効果を考えますから、あまり接待交際費の支出が多いと疑われることがあるのです。

 その場合は、その支出が「事業活動と直接の関連を持ち、業務の遂行上直接必要であった」ことをしっかり立証しなければなりません(「社長の交際費、会社のために使ったと証明できますか?」参照)。

 税は課税の公正、負担の公平を考え、厳格に規定されているのです。


ワンポイントレッスン

個人事業者の接待交際費には「常識」という限度額がある

 税の判断は、経済事象に応じて客観的、常識的に判断します。個人事業主には接待交際費の限度額がないといっても、自ずと常識の範囲があるのです。

▼連載「Taxマインドの磨き方」
著者 : 森 大志<もり・たいし>(税理士) 専修大学法学部卒業。平成元年、森会計事務所(森大志税理士事務所)開設。「中小企業経営者を応援したい」という思いからスタートしたブログ「税理士森大志(もりたいし)のひとりごと」がネット界で一躍有名となり、「ジャパンブログアワード2008」のビジネス部門グランプリを受賞。
http://www.tabisland.ne.jp/aoinfo/kanto/mori/
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