税務調査の日時・対象税目等の事前通知がルール化
どんな会社でも、必ず1度は経験するのが、税務署や国税局等(以下、「税務署等」といいます)による税務調査です。
税務調査は、あくまでも提出した過去の申告の確認なのですが、「何かミスがあったのでは…」と不安を感じる会社も多いのではないでしょうか。
この税務調査ですが、原則として、税務署等から「事前通知を行う」ことが法律で定められています。
平成23年度の税制改正において、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)により納税環境整備が行われ、国税通則法が改正されました。
以下のように、調査手続きに関する現行の運用上の取扱いが、法令上明確化されたのです。
第74条の9 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。)は、国税庁等又は税関の当該職員に納税義務者に対し実地の調査を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人(注)を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
1 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
2 調査を行う場所
3 調査の目的
4 調査の対象となる税目
5 調査の対象となる期間
6 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
7 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
(注)「当該税務代理人」とは、税務代理権限証書を提出している場合に代理人として指定されている税理士等です。
これは、私たち税務行政の前線で仕事をする税理士にとっても画期的な出来事でした。日本は法治国家ですから法律に従うことは当然のことですが、法律で明確化されていない部分については、課税庁に都合のいいように判断される可能性があるからです。
事前通知なしで税務調査がくるのはどんな場合か?
この法改正により、税務調査の事前通知が行われ、調査内容も明確化されるようになりました。
そして、税理士等の税務代理権限証書が提出されている場合には、通常は税理士等を通じて納税義務者に事前通知が行われます。
一方で、例外的に事前通知を要しない場合についても明確化されています。
第74条の10 前条第1項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第3項第1号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第1項の規定による通知を要しない。
ここでいう事前通知を要しない場合とは、次のような場合が考えらえます。
① 事前通知をすると、資料の改ざん等が容易に行われる恐れがある現金商売の業種の税務調査
② 過去の税務調査で、売上の除外等の行為が明らかになった会社の税務調査
現金商売の業種は、基本的に税務調査の事前通知がないといわれます。しかし、筆者の経験では、過去の税務調査において現金(売上)の管理がしっかりしている会社は、次回以降の税務調査では事前通知がありました。
特に小規模の会社に多いのですが、現金(売上)管理を身内だけで行い、複数人でチェックしていない場合は、事前通知なく税務調査が行われるかもしれません。
とはいえ、税務調査を行う際には事前通知をすることが原則です。
そこで、筆者の場合ですが、もし事前通知なく税務調査がきたときには、ひとまず(当初の目的は現金のチェックなので)現金と帳簿の確認をしてもらい、改めて税務調査の期日を決めるよう交渉します。
税務調査は、事前通知が原則です
通常の税務調査は、脱税の強制調査とは違って任意調査です。
事前通知がない税務調査の場合は、とりあえず現金チェックをしてもらい、改めて税務調査の期日を決めることを相談してみましょう。
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