今回は、「パブリシティ権」について教えてください!
- 質問者
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街中で撮った写真をネット上に公開する場合に気をつけなければいけない肖像権の問題については、前に解説していただきよくわかりました(第5回 どんなケースが「肖像権の侵害」に? 具体的に気をつけるポイントは?参照)。
その解説の最後に、「街中で撮った有名人の写真をブログに載せる場合には、パブリシティ権にも注意が必要」というお話しがでてきたと思います。
あまり聞きなれない言葉なのですが、パブリシティ権とはどういうものなのでしょうか。 - 弁護士
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パブリシティ権については、財産的権利としての肖像に関する権利というように説明しましたが、もう少し掘り下げて説明してみましょう。
商品やサービスのCMで有名人の姿を見かけることが多いと思います。これは、有名人を起用すると、その有名人の持っているイメージや知名度から、商品の売り上げが増大することが期待できるからです。
このように、有名人の姿や名前には、お客さんを集める力(これを「顧客吸引力」といいます)があり、そこには「商業的な価値がある」ということができます。 - 質問者
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好きな芸能人がCMしている商品は、私もついつい試してみたくなっちゃいます。
この有名人の姿や名前に認められる価値も「権利として保護されるべき」と考えられており、この権利のことを「パブリシティ権」といいます。
- 質問者
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つまり有名人のブランド力というか、ネームバリューを利用する権利がパブリシティ権ということですね。有名人の写真をブログに載せる場合には、このパブリシティ権の侵害が問題になってくるということでしょうか。
- 弁護士
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そういうことになります。
- 質問者
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パブリシティ権のことは、どの法律に書いてあるのですか?
- 弁護士
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じつをいうと、パブリシティ権について、具体的に定めた法律は存在しません。ですから、何に気をつければよいのか、条文を読めばはっきりするというわけではないのです。
ただ、最近の最高裁判例において、パブリシティ権について、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利
として、その権利性を認めた上で、侵害の判断基準が示されています。
どのような場合にパブリシティ権を侵害することになるのでしょう?
- 弁護士
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上記判例では、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」に、パブリシティ権を侵害するとの判断基準が示されています。
具体的には、以下の3つの類型を例示しています。- ① 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
- ② 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
- ③ 肖像等を商品等の広告として使用する場合
- 質問者
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ええと…。具体的にはどういう場合が当てはまるんですか?
- 弁護士
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①の類型としては、ブロマイドやグラビア写真が。
②の類型としては、肖像等を利用したキャラクター商品が。
③の類型としては、TVCMや広告チラシに肖像を使用するような場合が想定されます。 - 質問者
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そうすると、ブログに有名人の写真を載せるだけなら、①や②の類型にはあたらないということでよさそうですね。それに、私のブログは個人の日記帳のようなものですし、③の類型にもあたらないと考えてよいでしょうか?
- 弁護士
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①や②の類型にあたらないのはそのとおりです。
また、有名人の写真を日記や記事の内容を補足する目的で使用している限りでは、広告として使用していることにはなりませんので、③の類型にもあたらず、パブリシティ権の侵害にはならないと考えてよいと思います。もっとも、有名人の写真が掲載されているのが個人のブログだとしても、
- そこから自分の運営するショッピングサイトに誘導している
- 商品広告のための記事やアフィリエイトバナーに誘導している
といったような場合には、肖像等を商品等の広告として使用するものと評価される可能性もあり、パブリシティ権侵害と判断されるおそれがありますので、慎重に判断する必要があります。
もしパブリシティ権を侵害してしまった場合、どうなってしまうのでしょうか。
- 弁護士
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肖像権を侵害した場合と同じように、写真等の掲載を停止するよう差止めの請求を受ける可能性があります。また、使用料相当額(写真の使用を許諾する場合に通常支払うべき金銭に相当する額)の損害等について損害賠償請求を受ける可能性があります。
いくら個人のブログといっても、アクセス数を稼ぐ目的で安易に有名人の写真を掲載することは避けた方がよいでしょう。
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