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相次ぐ法改正・施行でどう変わるか?

これからの「非正規社員」の活用と採用のポイント

[ 企業実務オンライン編集部 ]

非正規社員の「雇用の安定」と「待遇改善」を目指した法改正が続いている。雇用の調整弁として、あるいはコスト削減のために非正規社員の採用を進めてきた日本企業だが、ここにきて“発想の転換”を求められているようだ。

これからの「非正規社員」の活用と採用のピント

5人に2人が非正規社員

 空前の売り手市場といわれた2015年度大卒者が、いよいよ新社会人として企業に入社してきた。人手不足の追い風に乗って順調なスタートを切った彼らだが、はたして30数年後、そのまま正社員として定年を迎える人がどれだけいるだろうか。

 彼らが生まれた1992~1994年当時、会社に勤めるということは、ほとんどの場合、「フルタイムで働く正社員になる」ことだった。実際、総務省の資料によれば、1994年時点の雇用労働者に占める非正規雇用者の割合は2割そこそこ。サラリーマン家庭のほとんどが、世帯主は終身雇用を前提に会社に勤める正社員だったはずだ。

 それが2015年になると、雇用労働者5,284万人のうち非正規雇用は1,980万人。企業などに雇用されて働く人の4割弱が正社員ではなく、非正規社員として働いているという実態がある。

 雇用労働者の総数自体は1994年の4,776万人から5,284万人(2015年)へと増えているなかで、正規雇用は3,805万人(1994年)から3,304万人(2015年)に減少。その減少分を吸収する形で、非正規雇用が971万人から1,980万人へと倍増した。

 多くの日本企業では、もともと“雇用の調整弁”として、業務の繁閑に応じて非正規社員を活用してきたはずが、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て、今では「常時、社員の一定割合が非正規雇用」であることを前提に人件費コストを考えるようになっている。

社会問題化する正社員との「格差」

 そうしたなか、問題となっているのが「正社員と非正規社員の格差」だ。

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(平成27年)によれば、正規雇用の労働者の賃金(時給ベース)が50~54歳をピークに山なりのカーブを描くのに対して、非正規雇用のそれはほぼ横ばい。一般労働者(短時間勤務以外の労働者)に限ってみると、35~39歳で正規雇用者が時給1,888円なのに比べ、非正規雇用者は1,256円、50~54歳にいたっては正規雇用の2,457円に対し非正規雇用は1,232円とほぼ半分の水準だ。

「格差の問題は、賃金だけではありません。非正規社員は企業において教育訓練を受ける機会が少なく、職歴がキャリア形成に結びつきにくい。それがまた転職活動に影響するといった具合に、非正規雇用から抜け出せない悪循環となるケースが多く見受けられます」

 そう語るのは、企業の雇用管理にくわしいトムズ・コンサルタントの小宮弘子氏である。

 生涯賃金の増加が見込めず、キャリア形成もしにくい非正規雇用者の増加は、少子化や社会保障問題に大きな影を落とす。ここ数年、非正規社員をめぐる法改正・施行が立て続けに行われているが、細部についての賛否はともかく、その目指すところがいずれも正社員との「格差是正」であることは間違いない。

■非正規社員をめぐる主な法改正
  • 労働者派遣法の改正(平成27年9月30日施行)…労働者派遣の期間制限の見直し(上限3年)、派遣労働者の雇用安定措置・キャリアアップ措置の義務化 ほか
  • 労働契約法の改正(平成25年4月1日施行)…契約期間が5年を超える有期雇用者の無期労働契約への転換、「雇止め法理」の法制化 ほか
  • パートタイム労働法(平成27年4月1日施行)…賃金の決定方法等の雇用管理措置に関する説明、「短時間労働者の待遇の原則」の新設 ほか

現在の非正規雇用は、企業にとって本当に効率的か?

 非正規社員の増加が格差の拡大を助長し社会問題化する一方で、雇う側の企業の現場でも、非正規社員の雇用をめぐる“矛盾”が顕在化してきている、と前出の小宮氏は話す。

「この20年、企業は業務の分業化を進め、定型的な仕事を非正規社員に任せることでコストを抑えてきました。しかし、仕事の一部を非正規社員に回すためにかえって正社員の仕事が増えていたり、業務全体の効率性や組織運営の観点から見て、企業にとって非正規雇用が必ずしもうまく機能しなくなってきているのが実情です」

 例えば、以下のような課題を抱える職場が多い、と小宮氏はいう。

■非正規社員の活用をめぐる課題
  • 定型的な業務の切り離しや社内の分業化を進め、非正規雇用者の仕事を決められた範囲に限定した結果、その前工程や後工程で正社員が行う仕事が増えている
  • 非正規雇用者に社内調整等ができず、要所要所で正社員のサポートが必要になる(1人で業務が完結できない)
  • 業務範囲の拡大や質の向上は、時給や月給に影響するためにできない
  • 雇用形態の違いが、社内の差別的な言動に影響する(ハラスメントの土壌となる)

 コスト抑制と業務の効率化を期待して非正規社員を活用していたはずが、かえって仕事にムダな工程が生まれ、正社員の労働時間を増やし、そのうえ労働トラブルのリスクを抱え込む結果になっている、と小宮氏は指摘するのだ。

求められるのは非正規社員を活かす「人事」

「ここ数年の法改正で、非正規社員の継続雇用には様々な制約が設けられました。仕事に慣れた派遣労働者の人に、3年を超えて同じ部署で働いてもらうことは難しくなりました。5年を超える有期契約労働者の無期転換も義務化されました。
 また、非正規雇用で働く人の雇用安定とキャリアアップを支援するため、非正規社員を雇用する企業や派遣会社には、適切な措置を講じることが求められています。

 おそらく、今後も“同一労働同一賃金”(均衡待遇)の方向で、非正規社員をめぐる法令の改正が続くでしょう」(小宮氏)

 それならば、非正規社員を雇用する企業の側も「発想を転換してはどうか」と小宮氏は提案する。

「たとえば、非正規雇用を〈欲しい人材の見極め期間〉ととらえるという発想です。じっくり見極めたうえで、長く働いてほしい人材だけを期間の定めのない雇用形態に転換させればいい。この場合、雇用形態が正社員である必要はありません」

 それでなくとも、多くの中小企業では慢性的な人材不足に直面している。それを補う人的資源として、非正規社員をもっと積極的に活用する道を考えてはどうか、ということだ。

 そして非正規雇用を無期雇用への助走期間と位置づけるならば、たとえ非正規社員であっても、正社員と同じように、企業への帰属意識を醸成するための施策人事評価が重要になってくる、と小宮氏は続ける。

「雇い止め時のトラブルを回避するという意味でも、これからは非正規社員に対して適正な人事評価をすることが大事になってきます。また、非正規雇用を〈欲しい人材の見極め期間〉と位置づけるのであれば、採用時においてもこれまでとは違った視点を持つことが必要でしょう」

 その視点とは、「人間力に注目すること」だ。

「社員をパソコンにたとえるなら、資格やスキル、知識は〈アプリケーション〉、人間力は〈OS〉に当たります。アプリケーションは後からインストールできますが、OSは入れ替えられません。
 では、職場で求められる人間力とはどんなものか。いろいろあるでしょうが、私は次の4つがポイントだと考えています」

・想像力
・コミュニケーション力
・課題形成力
・適応力

 企業ではいま、様々な価値観を持った複数の雇用形態の人が、仕事や会社に対して異なった距離感を保ちながら働いている。そうした多様な社員たちを活用していくには、正社員だけを念頭においた画一的な人事管理では対応しきれない。

 自社の雇用体系のなかに彼らをどう位置づけて活用していくのか。大きな経営課題として、非正規社員の活用のあり方を見直す時期にきているのかもしれない。

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