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やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第7回

権力に溺れたリーダーは、部下も会社も潰してしまう

[ 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰)]

人間というのは、それなりの地位を得てしばらくすると、それまで隠れていた欠点が顔を出すようになってくる。優秀なプレイヤーを教育しないままに昇進させると、権力に溺れるだけの権力者になる恐れが高いのはそのためだ。

やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第7回

上司の行動が「目に余る」ようになったら、経営者は要注意

 前回、人材登用に際しては、短所に目を向けずに長所を見て欲しい、と書いたが、短所が目立つようになってきたら要注意だ。
 どんな優秀な人間も、一定の地位を得て時間が経過すると、いつのまにか、「寛怠を欲する(怠け心がでてくる)」ようになり、それまで隠れていた欠点が顔を出すようになってくる。

 これは人間の持てる性(さが)といってもいい。それだけに、任用した後は、その人間の短所が顔を出し過ぎないように注意する必要はある。

 日本には、「大目に見る」という言葉がある。しかし、いまひとつ、「目に余る」という言葉もある。
 「目に余らない限り、大目に見る」ことが、人の登用に関しては大事なのではないだろうか。

 組織をリードする人は、部下とどのように接すればいいのだろうか。

 ドラッカーは、

 上司と部下の関係でなく、チームメイトと考える。

 といい、アメリカの政治学者ジェームズ・マグレガ-・バーンズは、

 リーダーたちにきわめて実用的なアドバイスをしよう。人質を人質らしく、王子様を王子様らしく扱うのではなく、すべての人を人間らしく扱うとよい。

 といっている。

 2人のアドバイスに従えば、間違っても部下のやる気は失せないが、現実には、

 問題は、自ら牛耳ることに喜びを感じているエグゼクティブが多いことだ。彼らは権力の魅力に溺れてしまう。こうなると会社は終わりだ

 と、ウェルチが危惧するタイプが多いのではないだろうか。
 優秀なプレイヤーを教育しないままに昇進させると、権力に溺れるだけの権力者になる恐れが高いと考えれば間違いないといえる。

優秀なリーダーは「部下を見て、指示を与える」

 ただし、「すべての人を人間らしく扱う」とはいうが、人間の性格、おかれている環境は千差万別だ。そこで考えないといけないのが、「人を見て法を説く」ということだ。

 釈迦の教えの中に、「対機説法」というのがある。これは、「医者は病に応じて薬を与える」のと同じ考えで、相手に応じて説法することを意味している。
 孔子がよいお手本といえる。

 孔子には、名前が記録されているだけで弟子が70数人いたという。それぞれの弟子が、「仁とは」「考とは」といった質問をするのだが、その答えは相手によって違っていた。
 『論語・先進第十一』の問答を例に紹介しておく。

 子路が『聞いたらすぐにそれを行いましょうか』とおたずねすると、先生(孔子)は『父兄といった方がおいでになる。どうしてまた聞いてすぐに行えよう』といわれた。
 冉有が『聞いたらすぐにそれを行いましょうか』とおたずねすると、先生は『聞いたらすぐにそれを行え』といわれた。

 公西華はいった。『子路さんが『聞いたらすぐにそれを行いましょうか』とおたずねしたときには、先生は『父兄といった方がおいでになる』といわれたのに、冉有さんが『聞いたらすぐにそれを行いましょうか』とおたずねしたときには、先生は『聞いたらすぐにそれを行え』といわれました。私は迷います。恐れ入りますがおたずねいたします。

 先生はいわれた。『冉有は消極的だから、それを励ましたのだが、子路は人をしのぐから、それをおさえたのだ』

 企業の中にも様々なタイプの社員がいる。積極的な人間もいれば消極的な人間もいる。
 ところが、多くの管理職は、パターン化された対応に終始しているのではないだろうか。それでは、人を活かすことも動かすこともできないと考えて欲しい。

 アイアコッカは、「部下たちを充分理解し、彼等の望み通りに1人ひとりの個性にあった対応をとることが大事」と指摘していることも付け加えておく。

▼連載「やる気を育て、人を活かすマネジメント術」
著者 : 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰) 1950年奈良県に生まれる。企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社、新しい経営者像の会(理事長・石山四郎)を経て、1979年に「竹村健一未来経営研究会」を企画設立し事務局長に就任。1986年に独立後はフリーランスのライターとして、企業経営、地域活性化の現場を歩き、取材を重ねる。現在は『元気塾』(経営者を対象)と『実践経営塾』(これから経営を担う人が対象)を主宰し、元気印の企業が増えることを願って活動中。
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