企業実務オンライン > ビジネス > デキる上司は失敗に学び、部下の言葉にも耳を傾ける

やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第12回

デキる上司は失敗に学び、部下の言葉にも耳を傾ける

[ 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰)]

自分の成功体験をそのまま部下に押しつけようとする上司は多い。しかし現実には、過去の成功体験から学べることは少ない。それよりも、失敗からとことん学び、謙虚な心を忘れずに他人に心を開くリーダーに部下はついていく。

やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第12回

成功するビジネスマンは〝失敗〟から学んでいる

 前回、仕事(体験)を通じて学ぶ風土を作り上げいくことで、社員は知恵を出すようになると書いた(社員が「自ら考え、知恵を出し、行動する」風土をつくれ)。しかし、成功体験からは得るものが少ないと考えないといけない。

 『週刊朝日』の名編集長として知られた扇谷正造は、

経験こそわが師、経験こそわが敵

 という言葉を残しているが、師になるのは失敗体験であり、敵になるのは成功体験だといえる。

 ドイツ最初の宰相ビスマルクの格言として、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というのがあるが、この経験も「成功体験」を意味していると考えたい。

 失敗から学べる人が、優良なビジネスマンになれるといってもいいだろう。

 経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。商売に失敗はつきものだ。
 10回新しいことを始めれば9回は失敗する——略——ほとんどの人は、成功した時も失敗した時も分析しない。何かボヤッと『成功してよかった』、あるいは『失敗してまずかったな』としか考えない。
 実行した個々の内容を具体的に分析し、因果関係がはっきりとわかるまで考え抜くことが必要だ。抽象論ではなく、具体論で考える必要がある。
 また、次の段階で成功するには、徹底分析した経験の蓄積が必要になる

 これはユニクロの柳井正社長の著書『一勝九敗』の中の一文だが、優良な企業人に共通するのは、失敗した後の対応のうまさだ。

「失敗は成功への第一ステップだ」

 柳井社長は、1997年に、「スポクロ」「ファミクロ」という新業態の店をスタートさせ、両店合わせて35店舗まで展開したが、1年以内に撤退しているし、最初のロンドン出店、また食品事業でも失敗を経験している。
 しかし、こうした失敗体験がなければ、今日のユニクロはあり得なかったとまでいう。

 筆者が知る先人の経営者で、失敗をその後の経営に生かすことに長けていたのは、本田宗一郎と藤田田だ。
 本田は、

 成功というものは、99%の失敗を土台にしている

 といっていたし、藤田は、筆者の「失敗をされたことはないのですか?」との問いに、

 思いが及ばなくてうまくいかなかったことはある。世間ではそれを失敗というのだろうが、私は違う。次に思いを及ばせてチャレンジするだけのこと。
 世間でいうところの失敗は、私にとっては成功への第一ステップだ

 と、答えている。

 3人とも積極的に新しいことにチャレンジする経営者だが、当然のように、思うようにいかないことが多々あった。並みの経営者は、そこであきらめてしまうのだろうが、3人は違う。
 その失敗から学び、失敗を踏み台に会社を成長させていったのだ。

経営の神様が教える〝人から学ぶ極意〟

 いまひとつ、体験から学ぶということは、学習の第一段階にすぎないことも理解しておく必要がある。なぜなら、「ひとりの人間が、一生涯に体験できることはたかが知れている」からだ。

 では、体験の次には、何から学べばいいのか。それは、自分が経験していないことを経験している人や先人の知恵からだ。

 では、どうすればいいのか。
 ひとつには、「聞く」ということがある。

 松下幸之助は、聞くことで学ぶ人だったと、コッター(ハーバード大学名誉教授)は、指摘し、次のように書いている。

 彼の言葉で好きなのは、「謙虚な心と開かれた精神があれば、誰からも、どこからも、いつでも学べる」というもの

 松下翁以外にも、学校教育を受けずに名経営者になった人は数多くいるが、それらの人に共通しているのは、人の話に謙虚に耳を傾けるところにある。

 『論語』に「下問を恥じず」とある。これは、下の人にも気軽に知らないことを質問できる人が優良なリーダーになれることを意味しているが、まさに松下幸之助はこのタイプだった。
 また、『論語と算盤』の著書を持ち、日本資本主義の父と称される渋沢栄一が、好んで実践したのが、この教えだったと聞く。

▼連載「やる気を育て、人を活かすマネジメント術」
著者 : 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰) 1950年奈良県に生まれる。企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社、新しい経営者像の会(理事長・石山四郎)を経て、1979年に「竹村健一未来経営研究会」を企画設立し事務局長に就任。1986年に独立後はフリーランスのライターとして、企業経営、地域活性化の現場を歩き、取材を重ねる。現在は『元気塾』(経営者を対象)と『実践経営塾』(これから経営を担う人が対象)を主宰し、元気印の企業が増えることを願って活動中。
疋田文明Official Site
月刊企業実務購読のご案内

最大19%OFF!! Fujisan.co.jpでお得にお求めいただけます!

購読のご案内

月刊『企業実務』ご購読はこちら

関連記事


企業の総務・人事・経理部門を全力サポート!
↓↓↓
【企業実務サポートクラブ】

≫ 企業実務サポートクラブ


新着記事
アクセスランキング
女性活躍推進特集
当社は、
Women Will の取り組みを応援しています。