日本ではバブル崩壊・リーマンショックを経て不況に突入し、やっとここ数年は国の経済政策の影響もあり景気が回復しつつある状況です。一方、労働力人口の減少の影響が出始め、人手不足の中、会社はなんとか利益を確保しなければならないため、社員にサービス残業や長時間労働を強いる傾向が強まってきました。
経営者やベテラン管理職は、もともと「モーレツ社員」ですから長時間労働にはなんの違和感もないのですが、世の中はそうはいかなくなりました。長時間労働は過重労働と密接に関連付けられ、事業主の管理責任や安全配慮義務違反を問われるようになりました。また未払いの時間外割増賃金があれば、これを退職時や問題発生時に突然請求されることも稀ではなくなりました。
時間外労働の削減は社会的課題である
近年話題になることが多い、いわゆる「名ばかり管理職」問題(名目上は管理職でも実質的には一般社員と同じ労働条件でありながら時間外割増賃金が支払われず、結果長時間のサービス残業を強いられる)も、結局裁判における争点の大半は、時間外割増賃金の請求です。
時間外労働が多いことは、もはやリスクととらえなければなりません。どの会社においても、これからは時間外労働の削減を目指すべきなのです。
ブラック企業ランキングの上位はすべて過重労働や長時間労働、あるいはサービス残業の指摘を受けた企業です。特に最近では社員の自殺などがあった場合、その理由について過重労働などの存在が証明されれば、間違いなくブラック企業の烙印を押されます。
管理職でも時間管理は必須
また労働基準法によると、管理職などについては通常の時間外割増賃金を必ずしも支給しなくとも問題ありませんが、だからといって時間管理そのものをしなくてもよいという解釈は明らかに誤りです。2008年に大手電機メーカーの男性社員が長時間労働によるストレスなどで自殺した事件においても、その男性は管理監督者でした。
裁判となれば、遺族などの日記帳まで証拠として採用され、過重労働は比較的簡単に証明されてしまいます。管理監督者といえども時間管理を免れるものではないことは、行政からの通達でも明らかなのです。
時間外労働の判断を社員に委ねてはいけない
時間外労働を本格的に抑制するためには、事前申請・許可制を徹底する必要があります。時間外労働が事実上の事後申請になってしまうことを黙認してはいけません。
製造業のラインのように管理職の命令だけで業務が遂行される場合はいいのですが、多くの企業では、未だに社員自身が時間外労働をどのくらいやるかをその都度決定しているのが実態です。「今月は忙しいから少し多めに時間外労働をやるか」という勝手な判断が通用するようではいけません。