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会計士が教える「営業マンのコスト」の話 第1回

営業マンは給料の3倍は稼ぐのが当たり前?

[ 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士)]

俗に「給料の3倍売ってこそ営業は一人前」などといわれます。もちろん、営業担当者にかかっているコストは、給料だけではありません。営業マンを1人雇って活動させることに、会社がどれだけコストをかけているのかを考えてみましょう。

営業マンのコストと給料の話

営業マン1人のコストは?

「売上はすべてを癒す」

 これは、ダイエー創業者の中内功氏が語った言葉です。スーパーマーケットのように売上と同時にお金が入ってくる業種では、まさに売上高の増加は、利益と資金の増加をもたらし、会社のあらゆる課題の解決に直結する万能薬だったに違いありません。

 このように重要な売上高をつくり出すのが営業マン。有効な営業活動をするということは、営業にかかるコストを上回る販売利益を獲得するということです。

 そこで、この営業活動の経費、特に営業マンのコストというものを考えてみたいと思います。

営業マンの疑問
ボクは毎月1,000万円も売上を上げているけど、給料はたった30万円しかもらってない。これって、会社の儲け過ぎじゃないの?

 ははは、そういう不満を漏らす営業マンは少なくないですね。

 商品にもよりますが、粗利が10%の商品なら、1,000万円の売上のためには900万円の仕入れがあります。粗利は100万円のみ。その中から営業マンの給料30万円は払われているわけです。

 じゃ、残りの70万円は、すべて会社の儲けになるのでしょうか? そこを分析してみましょう。

経費は給与の2~3倍?

 一般に人を1人雇うと給料の同額(人によっては2倍)の経費が別にかかるといわれます。「給料の5倍を目標粗利(売上総利益)にしろ」という言い方をする人もいますね。

営業マンの疑問
ボク1人を雇うために、給料と同じかそれ以上の経費がかかるわけ?

 たしかに、でき上がった会社の中で考えていると、なかなかピンとこないのも無理はありません。

 そこで、新たに営業所を開設して、3名の営業マンと1名の営業事務を雇ったケースを考えてみましょう。

 4人で使う営業所を借りるとなれば、10坪すなわち33平方メートルくらいの事務所は必要でしょう。商品の置場や応接なども欲しいとなれば、もう少し広い部屋を借りる必要が出てきます。
 東京などでは坪2万円以上は出さないといけないでしょうから、事務所を借りると毎月30万円がかかります。

 ほかに、敷金ないし保証金として6~10か月分を借りる時点で積まないといけませんね。

 それだけじゃありません。事務所であれば、パーティション、机など内部の什器設備が必要でしょう。これをリース料換算で10万円としておきましょうか。
 パソコン、電話、ファックス、コピーなどのリース料、毎月の使用料なども合わせれば10万円はかかると思われます。

 そして4名の人件費。営業所長が50万円、2名の営業マンと営業事務員がそれぞれ30万円の月給だとします。

営業マンの疑問
事務所の賃料30万円にプラスして、毎月140万円の人件費がかかるというわけだね

 いえいえ、人件費はこの140万円だけではありませんよ。夏と冬のボーナスはいりませんか? もちろん、欲しいですよね。

 会社にもよるのでしょうけれども、夏に2か月、冬に2か月分をもらうとすれば、この給与の4か月分を12か月で割って毎月積み立てておかないと、会社としては賞与を払えません。
 つまり、毎月の給与が140万円なら、その4倍を12(か月)で割った47万円弱が給与に上乗せすべきものということになります。

 通勤定期代も会社に負担してもらっていますね。東京などではかなりの遠距離通勤も少なくないので、1人平均1万5,000円くらいみないといけないのではないでしょうか。

 さらに、みなさんは給与から社会保険料を控除されていると思います。これは社会保険料のほぼ半額に過ぎず、残りは雇用している会社が負担をしています。

 30万円の給与なら、健康保険料厚生年金保険料の会社負担額は、4万1,682円×3名、営業所長の50万円なら6万9,470円となります(協会けんぽの場合)。

 労災保険料は、業種にもよりますが、0.5%とすれば、7,000円となりますので、社会保険料で約20万円。このほか、退職金の積立額、社員旅行や忘年会などの福利厚生費用などもかかってきますが、とりあえず、ここまでのところで集計してみましょう。

営業所長 500,000
営業マン2名と営業事務1名 900,000
営業所家賃 300,000
営業什器設備(リース料換算) 100,000
パソコン、FAX使用料と通信費 100,000
通勤交通費 60,000
賞与引当金 470,000
社会保険料会者負担分 200,000
このほか退職金の積立て、福利厚生費用 取りあえず除外
合計 2,630,000
月給30万円の人件費に対して(合計×30万円/140万円) 563,571

やはり人件費の2倍に

 集計してみた営業所開設に伴う営業マン1名当たりの増加費用は、給与30万円に対して、全体で約56万円となっており、ほぼ倍になっていることがわかります。給与と同額の経費が発生しているわけです。

営業マンの疑問
たしかに給与とほぼ同額の経費が発生していることになるなあ

 さらに! これだけで営業活動はできません。

 営業マンが、名刺も持たずに営業に行きますか? 営業には電車で行くにしろ、営業車を使うにしろ、交通費か車両のリース料やガソリン代が発生します。

 それに名刺だけで営業はできません。会社案内など会社のことがわかる資料、販売する商品のカタログなど必要でしょう。
 営業所が増えたぶんだけ、本社でのこうした配布資料の印刷部数も増えることになります。

 また、4名の給与の計算は、本社の人事担当が行うことになり、4名の増加は人事担当の作業を少しだけ増やします。

 営業の成果を集計するのが経理であり、営業所ごとの部門別損益などを集計して業務の効率性の把握や成績評価に使います。営業所の増加は、経理の仕事も少しだけ増やすことになります。

 このように営業マン1名の追加は、何らかの形で各種の間接的な経費を増やすものであり、目に見えにくい効果まで含めて「給料の3倍は稼がないと」という表現になるのでしょう。

▼連載「会計士が教える「営業マンのコスト」の話」
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著者 : 佐久間裕幸<さくま・ひろゆき>(公認会計士・税理士) 公認会計士・税理士。佐久間税務会計事務所所長。1986年、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。同年、公認会計士二次試験合格、大手監査法人に入所し、株式公開準備企業の監査等に従事。監査法人退職後、佐久間税務会計事務所を開設。中小・中堅企業の会計・税務の業務のほか、成長企業の公開準備支援などを行う。
http://www.sakumakaikei.com/
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