企業実務オンライン > ビジネス > 経営・経営者 > 管理会計で「決算書」の数字を組み直すと、会社の実態が見えてくる!

会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方 第1回

管理会計で「決算書」の数字を組み直すと、会社の実態が見えてくる!

[ 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士)]

「管理会計」という言葉をまったく知らないという経営者は少ないかもしれません。しかし、「管理会計」を実際の経営に役立てている会社がどれだけあるでしょうか。例えば、「管理会計」を使って決算書の数字を組み直すと、あなたの会社が「オンリーワン企業」になるためのロードマップが見えてきます。

管理会計で「決算書」の数字を組み直すと、会社の実態が見えてくる!

決算書等を作る「財務会計」、経営判断の道標となる「管理会計」

 会計は大きく財務会計と管理会計とに区分することができます。それぞれの内容は次の通りです。

財務会計(制度会計)

 財務会計とは、決算書(財務諸表)や税務申告書を作成するための会計です。決算書を見て、投資家は株式を購入するか売却するか、また、債権者(金融機関等)はさらに貸出しを増やすか、あるいは回収するかを判断します。税務署は、適正な納税額が計算されているかをチェックします。

 このように、決算書が適切に作成されているかどうかは、外部のさまざまな利害関係者(ステークホルダー)に及ぼす経済的な影響が強いため、会社法、金融商品取引法ならびに税法等、決算書を作成するための法規が制定されています。

管理会計

 管理会計は、経営管理のための会計です。つまり、経営者や各層の管理者が経営計画・予算を策定する際や、さまざまな意思決定を行うために、あるいは組織や社員の業績評価を行うために有用となる資料を提供するのが管理会計といえます。

 管理会計で作成された資料はあくまでも会社の内部で利用するためのもので、外部機関に提出することはありません。
 そもそもそうした資料を作成するかどうかは、会社の任意です。

 そのため、何らかの管理資料を作成している会社は多いと思いますが、資料の作成様式(フォーマット)、作成時期、作成内容は、それぞれの会社によってかなり異なったものとなっています。

 なお管理会計は、主として「業績評価」と「意思決定」の分野に区分できます。

視点 財務会計(制度会計) 管理会計
利用者 株主・債権者等 経営者・経営管理者等
利用目的 企業の財政状態・損益情報の報告 経済的意思決定のための情報提供
対象期間 過去(現在) 過去、現在、将来
報告内容 決算書 経営計画書、業績報告レポート等
作成ルール 会社法、金融商品取引法 なし
作成頻度 半期、年度、四半期 任意
情報の性格 正確性、網羅性、適時性、信頼性 有用性、適時性

管理会計で「財務会計のルールで縛られた決算書」の数字を組み直す

 先に書きましたように、基本的に財務会計は「外の人」が利用するために作成するものです。そのため決算書は、「会社の実態を表示する」というより、外から見て「会社間の比較ができる」ことのほうを重視している面があります。

 その結果、実態とは異なる経理処理(例えば研究開発費は全額費用処理など)が要求されることもあり、経営者にとって最大の関心事である、会社の現状を知り、これから将来に向かってどんな打ち手を行えばいいのかが、決算書からは見えにくくなっています。

 これでは「決算書にはあまり興味がない」という経営者の方が少なくないのも、無理からぬところでしょう。

 管理会計は、いわばこうした「財務会計のルールで縛られた決算書」から、その決算書の数字を分解したり、構成を変えたりすることなどによって、

  • 「本当のところの会社の実態はどうなのか?」
  • 「これからどんな打ち手を用いたら、会社の業績がアップするのか?」
  • 「そのとき、会社の実態は、数字にどのように見えてくるのか?」

 などを示すものです。経営者が会社の継続的な成長をなし得るために、意思決定を行う際の考え方や判断材料となるのが、管理会計というわけです。

 管理会計の考え方や手法は、成長を願う企業経営者にぜひマスターしておいていただきたい重要なアイテムだといえます。

こんなとき、「管理会計」は経営判断をくだす役に立つ!

 あまり抽象的な話ばかりとなってもわかりづらいので、具体的な管理会計の分野とはどのようなものかを具体例で示していきましょう。

(1)業績評価の分野

①ブレークダウン

 昨年と比較して会社の業績が悪化しているが、どこに問題があるのか? 会社の損益計算書をいくら眺めてみても問題点の所在まではわかりません。それを知るには、さまざまな切り口から損益計算書等のデータを分解して、問題点の所在を追跡していくことが必要となります。

 例えば、会社全体としては1億円の利益が出ていて問題がないように見えても、A部門は2億円の利益、B部門は1億円の赤字ということもありえます。

 ブレークダウンした分析を行うことによって、初めて、B部門に注力して赤字解消の対策を行わなければならないということに気付くことができます。

(2)意思決定の分野

①顧客からの納入価格引き下げへの対応

 顧客から納入価格の引き下げ要求があった場合、いくらまでならその要求を受諾できるかをシミュレーションしておくことも大事です。

 この場合には、コストを「変動費と固定費」、あるいは「お金が出ていくコストとお金が出ていかないコスト」に分類して検討することが必要となります。

②購入するか、あるいは内製するかの検討

 自社でも製品の製造に必要な機械装置などを内製できるが、機械メーカーから購入した場合と比較してどちらがいいのか、なかなか判断が難しいところです。

 この場合も、必要となるコストを積み上げた上で、「変動費と固定費」「お金が出ていくコストとお金が出ていかないコスト」に分類して検討することが必要となります。

③設備投資のシミュレーション

 今後、市場ニーズが大幅に拡大すると見込まれる製品を生産するために、巨額の設備投資を行って新工場を建設するべきかどうか。目論みが外れれば会社の命取りにもなりかねない、重大な判断です。

 こうしたときは、当初の投資額と次年度以降の投資回収額を計算して、設備投資の可否を決定します。

 いかがですか。管理会計がどのような場面で経営判断の役に立つか、イメージしていただけたでしょうか。

 今回は第1回ということで、総論と言いますかやや抽象的なお話しになったかもしれません。次回以降は、より具体的なテーマを取り上げていきたいと思います。

▼連載「会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方」
著者 : 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士) 横浜国立大学経営学部会計学科卒業後、中央監査法人に入所。その後独立し、青山公認会計士事務所を設立。会計士として、監査法人時代には株式上場支援を、独立後は中小企業の税務顧問としてさまざまな課題解決を支援。会計(財務・管理)・税務セミナーの講師としても活躍している。
合同会社経営基盤づくりサポート
青山公認会計士事務所
月刊企業実務購読のご案内

最大19%OFF!! Fujisan.co.jpでお得にお求めいただけます!

購読のご案内

月刊『企業実務』ご購読はこちら

関連記事


企業の総務・人事・経理部門を全力サポート!
↓↓↓
【企業実務サポートクラブ】

≫ 企業実務サポートクラブ


新着記事
アクセスランキング
女性活躍推進特集
当社は、
Women Will の取り組みを応援しています。