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会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方 第4回

営業部長の判断はなぜ間違うのか?本当に「儲かる商品」「儲かる顧客」の見極め方

[ 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士)]

「管理会計」という言葉をまったく知らないという経営者は少ないかもしれません。しかし、「管理会計」を実際の経営に役立てている会社がどれだけあるでしょうか。例えば、「管理会計」を使って決算書の数字を組み直すと、あなたの会社が「オンリーワン企業」になるためのロードマップが見えてきます。

営業部長の判断はなぜ間違うのか?

営業部長が「儲かる商品」を間違えたら、その会社は儲からない

「いかにして売上を増加させ、会社の利益獲得に貢献するか」

 会社が営業部長に期待する仕事は、これに尽きるでしょう。その期待に応えるため、通常、営業部長は次のような施策をとることと思います。

・会社の商品等のなかから、最も儲かる商品から優先的に販売促進活動を行う
・会社の顧客のなかから、最も儲かりそうな顧客を優先して販売促進活動を行う

 単純な言い方をすると、儲かる商品は販売を拡大し、儲からない商品は販売を縮小する。儲かる顧客には販売を拡大し、儲からない顧客先への販売は縮小するということになります。

 ですが、どの商品が本当に「儲かる商品」で、どの顧客が本当に「儲かる顧客」なのか。これを的確に判断することは、じつはなかなか難しいものなのです。

 それはなぜか?

 今回は、この「儲かる」ということの中身について解説していきたいと思います。

間違い①「変動費と固定費」分解を考えないで販売優先を順位づける

 前回(利益率が高い商品を増産すると儲けが減ることも?「原価」って何だ?)の記事で解説したように、原価を「変動費」と「固定費」に分解することなく、その商品にかかるコストを把握することはできません。

 例えば商品Aと商品Bとがあったとき、商品Aの1個当たりの利益が200円、商品Bの1個当たりの利益が50円だとすると、一見すると商品Aを多く販売したほうが儲かるように見えます。

 しかし、その商品にかかるコストを「変動費」と「固定費」に区分してみると、実際には1個当たりの利益が50円の商品Bのほうが儲かる、ということも充分にあり得るのです。

 そのため、どの製品から販売すればいいかを判断する際には、

・商品等を1個追加的に販売したときの利益
 (これを「限界利益」といい、販売単価-変動費で計算します)
・商品を追加的に1円販売したときの利益率
 (これを「限界利益率」といい、限界利益÷販売単価で計算します)

 などを用いて判断することが必要となります。

間違い②原価割れを理由に大量注文を断る

 原価割れの受注とは、例えば原価2,000円の商品Cに対して1,800円でX社から大量受注があったようなケースです。こうした場合、注文を受託すれば損失が発生するだけですから、「受注するなんてとんでもない!」と思われるかもしれません。

 しかし、商品Cの原価構成が下表の通りだったとしましょう。

(単位:円)
材料 800
労務費 600
経費 400
減価償却費 200
原価計 2,000

 受注価格と原価構成から、1,800円という受注価格は、減価償却費200円をまったく回収できない価格であることがわかります。ここで考えていただきたいことは、減価償却費分を回収できないことは、絶対に避けなければならないか? ということです。

 ところで、減価償却費はどんな費用かを考えてみましょう。

 減価償却費は、過去に機械設備等を購入して支払った金額(取得価額)の当期割当分です。そのため、当期の減価償却費は当期首以前から金額が定まっており、しかも計上に伴い「お金が出ていかない費用」だということがわかります。

 そのため、X社からの追加注文を受けて追加生産しても、計上される減価償却費の額は変わりませんし、追加的にキャッシュが出ていくこともありません。よって、結果的には1,800円の受注を受けることにより、利益もキャッシュフローも増加することになるのです。

 つまり、2,000円の原価の商品を1,800円で販売しても儲かることになります。

 原価構成をしっかり把握して、追加的な受注に対して利益やキャッシュフローがどう変化するか、あるいは変化しないかを分析することなく、単純に「原価割れだから」という理由で注文を断っていては、みすみす儲ける機会を失うことになります。

間違い③粗利益が大きい顧客を「儲かる顧客」と判断する

 ここでは商品から顧客に焦点を移し、「儲かるお客様は誰なのか」という話をします。

 通常、誰が会社にとって最も大切な顧客かは、その顧客から得られる売上や粗利益(=売上高-仕入原価または製造原価)で判断します。

 でも、本当にその考え方でいいのでしょうか?

 現実の会社間取引には、様々な取引条件が介在します。取引条件が、どちらか片方の会社が不誠実または不法行為を行った場合の取り決めであれば問題ありませんが、ときには、購入する側の会社にとって有利な取引条件となっていることも多いのではないでしょうか。

 そのため販売側の会社には、取引条件よっては、次のようなコストが必要となることがあります。

①返品条件の厳しさから発生する返品コスト(例:大手小売り納品)
②入金条件の厳しさから発生する資金コスト(例:6か月後手形払い)
③取引先の担当者個人の資質による交際費コスト(例:接待ゴルフ)
④取引先の作業を負担させられるコスト(例:販売員、値札ラベル貼り)

 こうしたコストが発生するとなると、自社にとって大事な顧客を売上高や粗利益だけで判定するのでは不十分です。

 つまり、会社にとって本当に「儲かる顧客」なのか判断する際には、粗利益からその顧客と取引することによって発生するコスト(例えば人件費、販売促進費、交際費、支払利息など)を控除した後の利益(私はこの利益を「貢献利益」と呼んでいます)で判定する必要があるのではないかと考えるわけです。

 下に簡単な顧客別損益計算書のイメージを掲載します。

(単位:円)
  甲社 乙社
売上高 12,500 9,600
売上原価 9,500 6,800
粗利益 3,000 2,800
人件費 120 0
交際費 80 0
支払利息 240 0
貢献利益 2,560 2,800

 甲社のほうが乙社よりも売上高や粗利益は大きいですが、過大な値引き要求など取引条件の厳しさを勘案すると、自社の利益に対する貢献度は乙社のほうが勝っています。

 もし、「多額の売上高が計上されている顧客なのに、なぜか儲かっていない」という感覚をもつことがあったら、ぜひ、顧客ごとの「貢献利益」を算出してみることをお勧めします。

▼連載「会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方」
著者 : 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士) 横浜国立大学経営学部会計学科卒業後、中央監査法人に入所。その後独立し、青山公認会計士事務所を設立。会計士として、監査法人時代には株式上場支援を、独立後は中小企業の税務顧問としてさまざまな課題解決を支援。会計(財務・管理)・税務セミナーの講師としても活躍している。
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