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会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方 第9回

「削っていいコスト」と「削ってはいけないコスト」を間違えるな!

[ 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士)]

「管理会計」という言葉をまったく知らないという経営者は少ないかもしれません。しかし、「管理会計」を実際の経営に役立てている会社がどれだけあるでしょうか。例えば、「管理会計」を使って決算書の数字を組み直すと、あなたの会社が「オンリーワン企業」になるためのロードマップが見えてきます。

「削っていいコスト」と「削ってはいけないコスト」を間違えるな!

企業で発生する「コスト」とは

 損益計算書には、製造原価、仕入高、人件費、物件費、研究開発費、支払利息、そして法人税など、様々なコストが計上されています。

■損益計算書に計上されるコスト
製造原価 ・仕入高 ・人件費(役員給与、社員給与、賞与、退職金、法定福利費、福利厚生費など) ・物件費(減価償却費、賃借料、リース料など) ・研究開発費、支払利息 ・法人税等(法人税、住民税、事業税) など

 これらのコストは、当然ながら実際に支払った金額をベースに計上されますが、いくら損益計算書を見ても、かけたコストが企業の売上高アップにどれくらい役立ったのかはわかりません。

 しかし、「どれだけ効率的にお金を使っているか」を検証するためには、そうしたコストについても、もっとよく考えてみる必要があるかと思います。まず、いわゆる「コスト」と呼ばれるものの中身について確認しておきましょう。

 コストは次のように分類することができます。

① お客様に製商品等をお渡しする(売り上げる)ために直接に要した費用
  …製造原価、仕入高
② お客様を見つけてきて、買っていただけるようにするために要した費用
  …販売費、交際費
③ 企業の全般的活動を行うための費用
  …役員給与、総務経理部門人件費、本社賃借料
④ 企業の将来の成長のための投資費用
  …研究開発費
⑤ 企業活動を行うための資金を調達に要する費用
  …支払利息

 この分類からも、それぞれのコストの中身について、なんとなく理解することはできますが、さらに経営者の“主観”によってコストを色分けすると、コストというものの性質がいっそうよくわかると思います。

 経営者の“主観”とは、すなわち、単純に「コスト(お金)をかけただけの元が取れると思うか、取れないと思うか」です。
 そうした視点でコストの分類を行ってみると、例えば次のようになります。

① 「これぐらいはかかる」と思う必要なコスト
  …材料費、商品仕入代、販売促進費
② 「これぐらいかかっても仕方がない」と感じる費用
  …人件費、賃借料
③ 「無駄に支払っている」と感じる費用
  …古参役員の人件費、保険料
④ 「支払っている効果があるかどうかわからない」費用
  …広告費、交際費、業界会費
⑤ 「払いたくないが、払わなければならない」費用
  …借入利息、税金
⑥ 「将来のために」意識的にかけている費用
  …設備投資費用、研究開発費
⑦ 「まさかのときのために」かけている費用
  …保険

 これはほんの一例で、必ずしも「この経費はこのような性格のもの」ということではありません。そこは経営者の“主観”によるわけです。
 経営者が目指す「企業の姿」を確認するためにも、ぜひ、皆様の会社でもこうしたコストの分類を行ってみるといいでしょう。

 さて、このようにコストを色分けしてみますと、コストには「企業の強みを維持するためのコスト(善玉菌のようなコスト)」と、そこが弱みであるために「必要以上にかかってしまうコスト(悪玉菌のようなコスト)」があることがわかります。

 そうなるとコスト削減を検討する際も、頭から「削減できるコストは、なんでも削減する」というのではなく、

「企業の強みをさらに強化するためのコストは目いっぱいかける。一方で、企業の強みにはさほど貢献しないコストは1円でも削減する」

 という姿勢で臨むことが大事であると考えられます。

 企業の強みをさらに強くするということは、具体的には、製品の性能で勝負する会社であれば「製造原価」を多くするでしょうし、企業の認知度により販売数量が増える企業であれば「広告費」を増やすでしょう。そして、創造性溢れるアイデアで勝負する企業では優秀な人材を確保するために「人件費」を多くする——などです。

コスト削減は2つの視点からアプローチする

 企業の強みを強化するためのコストはかける一方で、あまり企業の儲けに貢献しないようなコストについては、当然ながら削減していくことが必要となります。この場合の「コスト削減の仕方」を考えていきましょう。

(1) コストを変動費化する
 「変動費化する」というのは、毎月一定額支払っているコストを利用量に応じて支払う形態に替えるといったものです。
 例えば、毎月5万円支払って駐車場を借りているが、さほど使っていないのであれば時間課金の駐車場を借りるようにする、などです。

 また、退職者が出た場合もすぐに正社員を補充するのではなく、退職した社員が行っていた仕事をいくつかの仕事に分解することにより、「パートやアルバイトを使って同じ仕事ができないか?」と考えるのも、とても有効な方法だと思います。
 
 さらにこうした発想を発展させると、業務——特にあまり企業に付加価値を生まないような業務については、マニュアルを作成し、誰でもそのマニュアルを見れば、簡単な指導を受けるだけで業務をこなせるようにすれば、非付加価値業務に係る人件費の削減に役立つのではないか、とも考えられます。

 注意しなければいけないのは、コスト削減しようとするとき、「一律10%削減」というやり方は絶対にしないことです。

 一律に削減するということは、ダイエットにたとえるなら、筋肉も贅肉も区別なく削減するということです。贅肉と一緒に筋肉も減らしてしまったら、体重は減るでしょうが、以前と同じようなスピードでは走れませんし、重いモノも運べなくなってしまいます。

(2) 時間を削減し、コストを削減する
 また、時間を短縮することでコストを削減する方法もあります。

 例えば、まだ使えるからといって古いパソコンをずっと使い続けているというケースがあります。しかし、同じ仕事でも、新しいパソコンで処理をしたほうが、古いパソコンを使うよりずっと時間短縮になり、結果としてコスト削減になるかも知れません。パソコンは10万円も出さずに買えるのですから。

 特に「時間給いくら」で働いてもらうパートの方などが使うパソコンほど、「高性能スペックにすることによって業務処理時間を短くすれば、それだけコスト削減につながる」と考えることができます。

 このように、コスト削減といってもコスト自体を削減するだけではなく、「設備投資をして生産性を高めることにより、コストを削減する」という方法があることも忘れないでください。

▼連載「会社を“オンリーワン企業”にする決算書の作り方」
著者 : 青山 恒夫<あおやま・つねお>(税理士、公認会計士) 横浜国立大学経営学部会計学科卒業後、中央監査法人に入所。その後独立し、青山公認会計士事務所を設立。会計士として、監査法人時代には株式上場支援を、独立後は中小企業の税務顧問としてさまざまな課題解決を支援。会計(財務・管理)・税務セミナーの講師としても活躍している。
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