たとえ任意とされていても、「始業時刻前に出社してみんなで掃除をしよう」というような暗黙のルールがある場合には、使用者の黙示の指示があるものとして、始業時刻前の掃除時間も労働時間に含まれます。
ポイントは「黙示の指示がある」とみなされるか否か
1日の仕事を気持ち良く始められるよう、始業時刻の前に、机や床の掃除を従業員全員で行っているという企業は非常に多いですよね。
それ自体はとても素晴らしいことですが、その掃除時間について、「ちゃんと賃金を支払っていますか?」と聞くと、中小企業の経営者は首を横に振ることが多いように感じます。
その理由を尋ねると、大抵の場合、「あくまで任意参加だから」という答えが返ってきます。
ですが、たとえ建前上任意参加であったとしても、社内で「みんな掃除に参加して当たり前だよね」という雰囲気が漂っていたり、掃除に参加しない人について待遇に差をつけるなどの運用がなされていたりする場合には、掃除をすることについて使用者の黙示の指示があるものとして、始業時刻前の掃除時間も労働時間に含まれることになります。
1日 10 分の未払賃金も、過去2年分さかのぼると大きな負担に!
また、掃除時間以外でも、休憩時間に電話番をさせている場合や、社内ルールに則らずに自発的に残業しているのを上司が黙認しているような場合には、労働時間に含まれると判断されてしまいます。
本連載の第 2 回の記事(どのような違反があると、労基署に指摘される?)でご紹介したとおり、労働基準監督署の定期監督で指摘されやすい違反の第 1 位は、労働時間に関する違反です。
労働基準監督署が臨検監督に入った場合には、労働時間についてかなり厳しく判断され、場合によっては、過去 2 年分について未払賃金の支払いを勧告されることもあります。
たとえ 1 日 10 分程度の掃除時間であっても、過去 2 年分を従業員全員に支払うとなると、かなりの額になりかねませんので、現時点で違反していると思われる企業は、今のうちから改善の努力をしていくことをお勧めします。
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- 第11回 残業代さえ払えば、何時間でも残業をさせることができる?
- 第10回 「振替休日」と「代休」を取らせるのではどちらがトクか?
- 第9回 休日出勤しても、休日労働の割増賃金が発生するとは限らない!
- 第8回 失敗すると大打撃!固定残業代制度を導入する際の注意点は?
- 第7回 未払い賃金は、どのくらいまで遡って支払わないといけない?
- 第6回 始業前の掃除時間は、労働時間に含まれるの?
- 第5回 指導や勧告を受けてしまったら、どのように対応すればいい?
- 第4回 申告監督の場合、誰が申告したかを教えてもらえる?
- 第3回 事前連絡なしで来る労基署の臨検監督、拒否するとどうなる?
- 第2回 どのような違反があると、労基署に指摘される?
- 第1回 平成27年度に労基署に入られやすいのはどんな企業?