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老化を防ぎ、発想力もアップ! 脳が喜ぶ“知的”散歩術のススメ 第5回

ストレス疲れのときこそ散歩。歩けば脳がリセットされる

[ 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター)]

どうも気持ちが晴れない。ちょっとしたことですぐイライラする―。そんな人にぜひすすめたいのが「散歩」。たった30分のウォーキングが、気持ちをリセットし、脳の能力を20%以上も高めるのだ。

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現代人は、どうしてストレスに弱いのか

 ストレスなる言葉が叫ばれてから久しい。あれこれストレス解消法も登場したが、ストレスは増える一方である。ストレスに耐えかねたような出来事も多く報道されるようになった。これは人が時代とともに歩かなくなったことと関係しているのではあるまいか。

 30年前のサラリーマンは、1日 7,000 歩、距離にして4キロ程度歩いた。その半分が社長・重役で 3,400 歩前後。それでも「現代人は歩かなくなった」と当時の運動生理学者を嘆かせたものである。それが今や、電車通勤のサラリーマン男性で平均 5,800 歩、女性で 5,400 歩。マイカー通勤となると 3,600 歩にすぎない。重役並である。このデータを見ると、「灯台もと暗し」というか、賢明な読者にはご想像がつくと思う。

 脚の太い筋肉の感覚器からの信号が不足するとどうなるか。

 快感中枢である扁桃核も短期記憶の海馬も不活性なままになる。快感も記憶力も想像力も、注意力も、意欲も、全てが減少しているはずである。ストレスは増したというよりも、ストレスを解消する機会を自ら減らしたといってもいい。

 くわえて今日は、新聞やテレビ・ニュースが伝えることも不快な出来事ばかりであり、これもストレスとして重くのしかかる。

 こうした情報のストレスは、脳内でどのような事態を生み出しているのか——。

 ストレスに対する反応は、太古に作られたシステムなので、肉体的攻撃から逃れたり、戦ったりするようにできている。具体的には、脳の視床下部からの命令で、副腎から複数のホルモン(神経伝達物質)が放出される。そのうちのホルモンの1つにコルチゾールがある。

脳にたまったストレスは海馬や扁桃核を傷つける

 コルチゾールは抗炎症作用があって、怪我や打撲に備えて分泌される。今日の情報ストレスや競争ストレスでは、怪我や打撲の可能性はないので、分泌されたコルチゾールは消費されることがない。しかもコルチゾールは抗炎症作用があるので、長時間体内から消失しない。行き場を失ったコルチゾールは、脳の記憶中枢の海馬や快感中枢の扁桃核に毒となって作用する。

 この状態が長期間にわたれば、コルチゾールは脳の海馬や扁桃核へダメージを与えて、集中力の欠如、記憶力の低下、不愉快な気分を生じさせる。

 実際、アメリカで連続殺人犯や連続強姦犯の脳の画像を調べたところ、海馬が委縮して3分の1になっていた者もいた。逮捕されて臭い飯を食べさせられても、記憶力が低下しているので学習することもできないのである。

 こうしたコルチゾールを消失させるには、新聞を叩きつけて引きちぎり、テレビの画面を殴りつけでもすればよいのだろうが、それも無意味なことである。最も簡単なコルチゾールの解消法は、歩き回って消費してしまうことで、イライラと部屋の中を歩き回る人は、ストレス反応物質を消費しているのである。

 もっと有効なのは、散歩に出るにかぎる。コルチゾールを消費するばかりか、セロトニンやドーパミンがストレスから脳をリセットしてくれる。

 「引きこもり」「自動車で送り迎え」などの人々がストレスに耐えかねるのも、むべなるかなである。現代人は足元から心とからだの健康を見直す必要がある。

▼連載「老化を防ぎ、発想力もアップ! 脳が喜ぶ“知的”散歩術のススメ」

著者 : 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター) 1949年、神奈川県に生まれる。日本大学芸術学部映画学科で映画理論を専攻。放送作家を経て、『やじうま大百科』(角川文庫)で雑学家に。「万年書生」と称し、東西の歴史や民俗学をはじめとする人文科学から科学技術史まで、幅広い好奇心を持ちながら「人間とは何か」を追求。著書に『「散歩学」のすすめ』(中公新書クラレ)、『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実』(講談社プラスα新書)などがある。
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