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退職願(届)をめぐる労務問題Q&A 第3回

メールやファクシミリで送られてきた退職願は有効か?

[ 橋本 征也<はしもと・まさや>(社会保険労務士)]

退職願を出した社員が、あとになって「やっぱり辞めたくないので撤回させてほしい」などといってくることがあります。そんなときは、どう対応すればいいのでしょうか。退職願(届)の受理・撤回等に関するトラブルを防ぐためのポイントを解説します。

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Q若い社員が退職願をメールで送ってきました。
メールやファクシミリ、郵送により退職願の提出は有効なのでしょうか。

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メールやファクシミリなどで送られてきた退職願も有効とされています。トラブルを防ぐには、退職届といった文書形式で運用することが望ましいといえます。

 退職の意思表示は、口頭でも有効とされています。一方で、退職日・退職理由・退職の撤回などについてトラブルとなる場合を想定すれば、退職届といった文書形式で運用することが望ましいといえます。

 インターネットが業務上使用されるようになって久しいですが、従業員からの退職の意思表示がメールで送られてくることが増えているようです。

 結論からいうと、メールでの退職願(届)も法的には有効とされています。ただし、本人の真正な退職意思に基づいて送られてきたものであるかが有効性の要件となります。

 なりすましなど、本人の意思に反していたり、または詐欺・脅迫等によってメールで退職願(届)を送っていたりする場合など、法的に無効とされることもあります。

 メールでの退職の意思表示は、倫理的・社会的には問題もあるのでしょうが、文面・日付・送信先などの履歴が残るため、かえって法的有効性を確保しやすいツールといえます。

 郵送やファクシミリによって退職願(届)が従業員から送られてきた場合も同様です。

 ファクシミリの場合、その内容や送信・受信の記録は会社と従業員のFAX機に残ります。

 普通郵便は記録が残らないので、郵送の場合は内容証明によって退職願(届)が送られてくることがあります。この場合、日付も郵送の内容も郵便局において証明されます。

辞職が成立するのは、退職の意思表示から 14 日たってから

 もっとも、メールなどで突然、「明日で退職したい」などと依頼されても、会社として困る場合もあるでしょう。引継ぎが必要な場合もあるはずです。

 その場合には、民法第627条の辞職の内容に沿って、14 日間は勤務してもらうことは可能です。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

 精神的にうつ気味であったり、勤務が無理という場合には、後々のトラブルを考えて強制はしないほうが無難ですが、14 日だけ我慢して働いてもらうということは、原則として違法ではありません。

 本人とメールでもいいので話し合いをして、無理のない範囲で 14 日間は働いてもらうことは可能といえます。

 会社の就業規則で、引継ぎの期間を「 30 日間」「 3 か月」などと規定している場合も多いようですが、この辞職の規定からすれば、このような会社が任意に規定した期間を拘束することは法的に無理があります。特に、従業員本人が辞職をするという意思表示をしている場合には、悪質ともいえるでしょう。

 ですので、「14日」ということを優先して、引継ぎは検討していくようにしましょう。

※本記事は、月刊「企業実務」(2014年2月号)に掲載した「退職願(届)の受理・撤回等に関する労務問題Q&A」を企業実務オンライン用に再構成したものです。

▼連載「退職願(届)をめぐる労務問題Q&A」
著者 : 橋本 征也<はしもと・まさや>(社会保険労務士) 社会保険労務士AF事務所代表。1976年生まれ、大阪府出身。大阪大学法学部を卒業後、大手生命保険会社に入社。同社を退職後、大手エネルギー会社に水道メーターの検針員として入社。間もなく現場の労務管理職となる。同社が水道部門から撤退するのを機に退職し、社会保険労務士となる。
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