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やってはいけない会社の人事 第4回

処分を決意することを恐れてはいけない!ローパフォーマー(仕事ができない社員)は会社をダメにする

[ 河西知一(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 代表取締役社長)、小宮弘子(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 取締役)]

「ローパフォーマー」という言葉をお聞きになられたことがあると思います。労働力人口が減少し、右肩上がりの成長が見込めない経済環境では、会社にはシビアなコスト管理が求められます。業績に全く貢献できない社員を放置し続けることは、許されない環境となりつつあるのです。

最悪の場合は解雇を視野に紛争対応も。ケース別ローパフォーマー対応方法

 職場の生産性を損なうローパフォーマーに対しては、最悪の場合、解雇も視野に入れて検討する必要があります。
 と言っても、即解雇ということではありません。

 労働人口の減少で新規採用が難しいなか、ローパフォーマーといえども会社にとっては貴重な人的資源です。
 まず、人事部門に求められることは、ローパフォーマーをミドルパフォーマーにするための努力です。

 それでもどうにもならないときは、まず合意退職を目指し、最終手段として解雇を検討することになります。合意退職を進める際には、金銭的あるいは再就職支援等の退職パッケージを検討することも忘れてはなりません。

 以下に、ケースごとに分けて、ローパフォーマーへの対応法を説明します。


■ 新卒ゼネラリスト(総合職)

 新卒は、採用に際して配属される部門や従事する業務も特定されません。業務が特定されないわけですから、必要とされる能力やその程度も特定されません。
 すなわち労働契約の内容に、具体的な能力要件(特定の能力の有無・レベル等)が含まれていないのです。

 したがって、会社には社員教育や配置転換等により、職務遂行能力を開発向上させる義務があります。
 中途採用者等とは異なり、解雇要件となる〈能力不足の範囲〉は限定的なものと言えます。


■ 新卒・第二新卒の職種限定者

 新卒の職種限定者は、基本的に職務経験がありません。中途採用者の場合は、経験があったとしても年数的に十分な経験があるとは言えません。

 その点を考慮すれば、一定期間の教育指導期間(配転等を含む)が必要であると考えられます。


■ その他中途採用者

① 特定の能力や技能などを保有していることを条件に、比較的高額な給与で採用した管理職クラスの場合

 会社が能力向上の義務を負わないため、必ずしも注意・指導や配置転換等による再教育を行う必要はありません。
 それでも、本人に〈能力不足〉を意識させるためには、注意・指導をしたほうが良いでしょう。

 本人の〈能力不足〉であることを主張する場合は、以下の点に注意します。

  • 成果の判定期間が妥当であるかどうか
  • 本人の病気や家族の状況、人間関係等の外部要因があるかどうか
  • 成果を達成した社員に対する会社からの支援はあるかどうか

 また、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておくことが大事です。
 労働契約締結時には「地位」の特定に加えて、会社が求める職務内容や業務成果(内容や数値等)を記載しておきましょう。

② ①以外の通常の給与水準で採用した非管理職クラスの場合

 注意・指導が全く必要ないとは言えず、職種変更などによる雇用確保の対応が求められます。

 やはり、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておくことを忘れてはいけません。


■ 試用期間中の社員

 注意・指導や、試用期間中に改善プログラムを実施します。

 また試用期間中とはいえ、単に〈能力不足〉というだけでは正式採用しない理由として厳しいところです。
 会社が求める職務内容に対して、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておきます。


■ 契約社員

①契約期間途中の解雇はよほどの事情がある場合のみ

 労働契約法17条に明記されているように、期間を定めた雇用契約ですから、よほどの事情がない限り、契約期間途中の解雇は認められないものと考えられます。

使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
【労働契約法:17条】

②雇止めは解雇と同様に扱われることもある

 契約社員の業務内容や更新状況等、一定の要件が揃う場合は、雇止めが解雇と同様に扱われることもあります。
 契約期間中に注意・指導の繰り返し、改善期間を設定する等の対応が必要です。

雇止めが解雇扱いとされる要件

  • 業務の内容が正社員と同一で、長期間にわたる雇用契約を結んでいる場合
  • 会社の言動等、契約更新に対する期待度が高い場合
  • 更新の手続きと実態(更新手続きが形式的・更新回数が多い場合など)
  • 同様の立場の他の契約社員について、雇用契約更新を行っている場合
  • 更新回数や契約年数に上限が設けられていない場合
▼連載「やってはいけない会社の人事」

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著者 : 河西知一(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 代表取締役社長) 大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。
http://www.tomscons.co.jp/
著者 : 小宮弘子(特定社会保険労務士、トムズ・コンサルタント株式会社 取締役) 都市銀行にて外為業務、人事総務業務に従事し、資格取得後、トムズ・コンサルタントに入社。 「人」に関するスペシャリストとして、分野を問わずにマルチに活躍。労務相談業務を中心に人事制度改定や就業規則改定等、幅広く活躍。その他セミナー講師等としても活躍。著書に『法律家のための年金・保険』(新日本法規)
http://www.tomscons.co.jp/
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