最悪の場合は解雇を視野に紛争対応も。ケース別ローパフォーマー対応方法
職場の生産性を損なうローパフォーマーに対しては、最悪の場合、解雇も視野に入れて検討する必要があります。
と言っても、即解雇ということではありません。
労働人口の減少で新規採用が難しいなか、ローパフォーマーといえども会社にとっては貴重な人的資源です。
まず、人事部門に求められることは、ローパフォーマーをミドルパフォーマーにするための努力です。
それでもどうにもならないときは、まず合意退職を目指し、最終手段として解雇を検討することになります。合意退職を進める際には、金銭的あるいは再就職支援等の退職パッケージを検討することも忘れてはなりません。
以下に、ケースごとに分けて、ローパフォーマーへの対応法を説明します。
■ 新卒ゼネラリスト(総合職)
新卒は、採用に際して配属される部門や従事する業務も特定されません。業務が特定されないわけですから、必要とされる能力やその程度も特定されません。
すなわち労働契約の内容に、具体的な能力要件(特定の能力の有無・レベル等)が含まれていないのです。
したがって、会社には社員教育や配置転換等により、職務遂行能力を開発向上させる義務があります。
中途採用者等とは異なり、解雇要件となる〈能力不足の範囲〉は限定的なものと言えます。
■ 新卒・第二新卒の職種限定者
新卒の職種限定者は、基本的に職務経験がありません。中途採用者の場合は、経験があったとしても年数的に十分な経験があるとは言えません。
その点を考慮すれば、一定期間の教育指導期間(配転等を含む)が必要であると考えられます。
■ その他中途採用者
① 特定の能力や技能などを保有していることを条件に、比較的高額な給与で採用した管理職クラスの場合
会社が能力向上の義務を負わないため、必ずしも注意・指導や配置転換等による再教育を行う必要はありません。
それでも、本人に〈能力不足〉を意識させるためには、注意・指導をしたほうが良いでしょう。
本人の〈能力不足〉であることを主張する場合は、以下の点に注意します。
- 成果の判定期間が妥当であるかどうか
- 本人の病気や家族の状況、人間関係等の外部要因があるかどうか
- 成果を達成した社員に対する会社からの支援はあるかどうか
また、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておくことが大事です。
労働契約締結時には「地位」の特定に加えて、会社が求める職務内容や業務成果(内容や数値等)を記載しておきましょう。
② ①以外の通常の給与水準で採用した非管理職クラスの場合
注意・指導が全く必要ないとは言えず、職種変更などによる雇用確保の対応が求められます。
やはり、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておくことを忘れてはいけません。
■ 試用期間中の社員
注意・指導や、試用期間中に改善プログラムを実施します。
また試用期間中とはいえ、単に〈能力不足〉というだけでは正式採用しない理由として厳しいところです。
会社が求める職務内容に対して、〈能力不足を証明する事実〉を記録しておきます。
■ 契約社員
①契約期間途中の解雇はよほどの事情がある場合のみ
労働契約法17条に明記されているように、期間を定めた雇用契約ですから、よほどの事情がない限り、契約期間途中の解雇は認められないものと考えられます。
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
【労働契約法:17条】
②雇止めは解雇と同様に扱われることもある
契約社員の業務内容や更新状況等、一定の要件が揃う場合は、雇止めが解雇と同様に扱われることもあります。
契約期間中に注意・指導の繰り返し、改善期間を設定する等の対応が必要です。
雇止めが解雇扱いとされる要件
- 業務の内容が正社員と同一で、長期間にわたる雇用契約を結んでいる場合
- 会社の言動等、契約更新に対する期待度が高い場合
- 更新の手続きと実態(更新手続きが形式的・更新回数が多い場合など)
- 同様の立場の他の契約社員について、雇用契約更新を行っている場合
- 更新回数や契約年数に上限が設けられていない場合
- ▼連載「やってはいけない会社の人事」