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弁護士が教える「痴漢に間違われたときの法律知識」 第4回

当番弁護士がやってきた! 釈放されるために、弁護士は何をしてくれるのか?

[ 原 香苗<はら・かなえ>(弁護士)]

満員電車のなかで、もしも痴漢を疑われたら? そのとたん、あなたの平穏な日常生活は一変してしまうかもしれません。疑いを晴らし、平穏な生活を取り戻すためにはどう行動するのが最善なのか。刑事事件にくわしい弁護士がやさしく解説します。

痴漢に間違われたときの法律知識

「当番弁護士」を呼ぶにはどうすればいいの?

 前回までの連載で、逮捕されたときには、弁護士の知り合いがいない場合、「当番弁護士」を呼ぶことをお勧めしてきました。
 当番弁護士制度とは、弁護士が1回無料で逮捕された人に面会に行く制度です。当番弁護士は、逮捕された本人が呼ぶこともできますし、家族が呼ぶこともできます。

 本人が当番弁護士を呼ぶには、警察官、検察官または裁判官に、「当番弁護士を呼んでください」と言ってください。逮捕された方のご家族が当番弁護士を呼ぶには、逮捕された場所の弁護士会(東京では、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会のいずれかの弁護士会)にお問い合わせください。

 各地域の弁護士会は、当番弁護士名簿を作成しています。弁護士会は、その名簿に載っている弁護士に、担当日を割り当てます。

 本人が警察官等に当番弁護士を呼びたいと伝えれば、警察官等はすぐに弁護士会に連絡をしてくれます。弁護士会へ連絡が入れば、弁護士会からその日の担当となっている弁護士に連絡をし、連絡を受けた弁護士は、逮捕されている方のところへ出動することになります。
 多くの当番弁護士は、連絡を受けたその日に出動してくれるでしょう。

 当番弁護士には、契約をすれば、そのまま弁護を依頼することもできます。弁護士費用を負担する資力の乏しい人であっても、被疑者国選弁護人の制度や、刑事被疑者弁護援助制度を利用して、弁護士に弁護活動を依頼できる場合がありますので、まずは、当番弁護士を呼び、説明を受けるとよいでしょう。

 もちろん、その弁護士に依頼しないこともできます。東京三弁護士会では、その後の弁護活動について受任しなかった場合でも、家族への連絡を依頼されたときには、連絡することを推奨しています。
 別の弁護士に依頼したいと思った場合には、当番弁護士に家族への連絡を依頼し、家族に別の弁護士を探してもらうという方法があり得るでしょう。

気になる疑問①
痴漢をしてなくても、弁護士を呼んだほうがよいの?

逮捕直後のあなたに情報を伝えたり助言したりすることができるのは、弁護士だけ

 一刻も早く、弁護士を呼ぶことをお勧めします。

 どのような事件であっても、できるだけ早く弁護士を呼ぶべきですが、特に、犯罪行為をしていないと主張する場合(否認事件)や、釈放に向けた活動をする必要のある事件では、一刻も早く弁護士に会うべきです。

 検察官は、逮捕の後も身体拘束を継続する必要があると考えた場合には、逮捕されてから72時間以内に、勾留という長期間の身体拘束をすることを裁判所に請求します。

 逮捕段階(72時間以内)では、弁護士以外の人と会うことはできず、家族とも連絡が取れないため、情報が入ってきません。
 そんなとき、弁護士から正確な情報を得ることは必要不可欠なはずです。

 特に否認事件では、取り調べの際、黙秘をすることが鉄則です(黙秘すべき理由については、前回までの記事をご覧ください)。
 しかし、黙秘をするというのは想像以上に困難なことで、弁護士のアドバイスが不可欠です。

気になる疑問②
釈放されるために、弁護士は何をしてくれるの?

 痴漢事件の場合には、検察官が勾留請求をしても、裁判官が却下することが多くなってきています。裁判官が勾留するか否かを判断するにあたっては、

「罪証隠滅や逃亡のおそれがどの程度あるか」
「勾留することによる不利益がどの程度あるか」

 という点がポイントになります。

 逮捕されてから72時間以内に検察官が勾留請求をし、その直後に裁判官が勾留するか否かの判断をすることになります。そして勾留された場合は、20日間は釈放されないことが多いのが実情です。

 早期に釈放されるためには、裁判官が勾留するか否かの判断をする前に、罪証隠滅や逃亡をするおそれがないこと、勾留することによる不利益が大きいことを裁判官に説明することが必要です。

面会の際に弁護士に伝えるべきこと

 罪証隠滅のおそれの有無・程度を判断するにあたっては、「本人が、被害を訴えている方に会う心配がないか」が重要なポイントとなります。仮に被害を訴えている方と直接会って、被害にあったことは勘違いだったと警察官に話してほしいなどという働きかけをすれば、それは罪証隠滅行為になります。

 そのため、「その人と面識がなく、連絡先も知りません」「その人が乗っていた電車は使いません」などと説明できることが重要になってきます。

 逃亡のおそれがないと判断してもらうためには、同居している配偶者や両親がいる、仕事がある、持ち家があるなどの事情を説明することになります。

 勾留による不利益が大きいと判断してもらうためには、扶養家族がいる、定職があり勾留によって失職するおそれがある、病気を患っているなどの事情を説明することになります。

 弁護士に弁護を依頼すれば、弁護士から、裁判所に、罪証隠滅や逃亡のおそれがないこと、勾留による不利益が大きいことを説明した意見書を提出することができます。
 その際、その意見を裏付ける資料を提出します。たとえば、家族の方の身元引受書や、逮捕されている方の名刺など勤務先がわかるものなどです。また、逮捕されている方が、被害を訴えている方に接触しないことなどを約束する誓約書を提出することも効果的でしょう。

 このような資料は弁護士が集めて提出しなければ、裁判官が入手することはできません。このように、弁護士に依頼するメリットは大きいのです。

 刑事弁護をしていると、もう少し早く弁護士を呼んでもらえていれば…と思うことがあります。

 逮捕されたら、当番弁護士(もしくは知り合いの弁護士)を呼ぶ

 このことを覚えておいてください。

▼連載『弁護士が教える「痴漢に間違われたときの法律知識」』
著者 : 原 香苗<はら・かなえ>(弁護士) 早稲田大学大学院法務研究科修了。2015年弁護士登録。東京弁護士会刑事弁護委員会研修員。刑事事件に取り組むとともに、離婚、相続、成年後見など地域の皆様の生活に密着した事件に取り組む。若手弁護士らをつなぐネットワーク・弁護士マイスターに参加。
北千住パブリック法律事務所
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