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取引先リスク管理Q&A 第5回(全12回)

Q5 売掛債権を担保に取りたい! 何をすればいい?

[ 『取引先リスク管理Q&A』 株式会社リスクモンスター(データ工場)]

取引先のリスク管理においては、「取引先の与信調査」から始まって、契約を締結する段階の「債権保全」、その契約やその履行状況を管理する段階の「債権管理」、そして最後に債権を回収する段階の「債権回収」と、各段階の管理がいずれも重要になります。こうした取引先のリスク管理の方法について、Q&A形式でわかりやすく解説します。

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Q 売掛債権を担保に取りたい!何をすればいい?
 売掛金を担保に取るためには、取引先の販売先を把握し、どの販売先にどんな債権を有しているのか、債権の保有状況を把握しておく必要があります。

 集合債権譲渡担保の活用によって、取引先が有する売掛債権を担保として取得できます。

解説

売掛債権を担保取得する際の注意点

 不動産の担保であれば、現地を訪れれば目的物の有無を確認することができますが、債権の場合は、目に見えず、客観的な確認が難しいため、債務者の言葉だけを鵜呑みにするのではなく、まずは、対象とする取引の基本契約書や発注書等の取引証拠書類に基づき、取引実態を確認する必要があります。

 特に集合債権譲渡担保を活用する場合には、将来発生する債権についても、担保の対象となることから、契約締結後の取引先の取引状況の把握や、担保権実行時に速やかに第三債務者を特定することが必要です。

 取引が継続的かつ安定的に売掛債権が発生していることを確認し、担保対象となる債務者の取引先の信用力も調査すべきです。

 実務においては、毎月末の債権の残高や銘柄を、口頭や文書で確認するほか、売掛金帳簿などで確認しますいずれも相手方の協力が必要となるため、担保取得時に合意を得ることが望ましいとも言えます。

評価方法

 売掛債権を担保として設定する場合、当該売掛債権は、基本的に回収が見込めることを前提としていることになりますが、第三債務者によっては、自社に支払うことに抵抗を示し、速やかな回収を図れない可能性があります。

 また、支払人となる第三債務者の信用力が低い場合は、支払能力の不足により十分な回収を得られない可能性もありますので、売掛債権は、簿価をそのまま評価額とするのではなく、70%程度の掛け目を乗じて評価することが望ましいと言えます。

集合債権譲渡担保の設定

 売掛債権を担保として設定するには、集合動産譲渡担保設定契約の締結が有効です。集合債権譲渡担保とは、債務者が保有する複数の債権をまとめて1つの集合債権として把握し、それを譲渡担保の目的とする方法です。

 譲渡担保の対象となる債権の範囲を特定する必要があるため、当事者、取引の種類、発生期間等、他の債権と識別が可能な程度に範囲を特定します。

第三者対抗要件の具備

 集合債権譲渡担保は、第三債務者に対して確定日付のある証書による通知をし、または第三債務者から確定日付のある証書による承諾を得ることが第三者対抗要件となります。

 しかしながら、債権譲渡通知を発することは、取引先の信用に問題があるとの印象を第三者に与えます。これを避けつつ第三者対抗要件を具備する方法として、債権譲渡登記ファイルへ登記する方法もあります。

 第三者対抗要件を備えない場合、債務者が倒産手続に入った際に、担保権を主張できないため、きわめて危険です。

 したがって、集合債権譲渡担保が設定されたことが表明されることによって、債務者の信用不安が広がることに配慮するのであれば、第三債務者へ通知することなく対抗要件を具備できる、債権譲渡登記を活用することが望ましいです。

出典:本記事は、『取引先リスク管理Q&A』(リスクモンスター データ工場 著)からの転載です。
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