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取引先リスク管理Q&A 第4回(全12回)

Q4 契約書で保全したい! どんな条項を盛り込めばいい?

[ 『取引先リスク管理Q&A』 株式会社リスクモンスター(データ工場)]

取引先のリスク管理においては、「取引先の与信調査」から始まって、契約を締結する段階の「債権保全」、その契約やその履行状況を管理する段階の「債権管理」、そして最後に債権を回収する段階の「債権回収」と、各段階の管理がいずれも重要になります。こうした取引先のリスク管理の方法について、Q&A形式でわかりやすく解説します。

契約書で債権の保全をするには

Q4 契約書で保全したい!どんな条項を盛り込めばいい?
 契約書は、「契約自由の原則」によって、強行法規に反しない範囲であれば、自由に契約内容を定めることができますので、自社にとって取引が有利になる条項を積極的に盛り込むことが、債権を保全するうえで重要になります。

 債権の保全をするために契約書に盛り込む条項としては、期限の利益の喪失条項、所有権留保条項、契約解除条項、相殺予約条項等があります。

解説

契約内容の重要性

 契約書を作成する目的は、契約内容を明確にし、紛争を防止するためにあります。契約は、当事者間の合意のみで成立するため、口約束だけでも成立しますが、円滑な取引と紛争の予防および解決のためにひとたび契約が成立すれば当事者はその内容に強制されることとなります。したがって、いかに自己に不利益がない内容の契約を締結するかが重要です。

期限の利益喪失条項

 「期限の利益」とは、債務者にとって利益となる期限のことです。たとえば、個別契約などで定める支払日が到来するまでは、債務者は支払期限前に信用不安に陥ったとしても、代金を支払う義務はありません。そこで、一定の事由がある場合には、相手方は期限利益を喪失する旨の条項が必要です。

 民法上も一定の事由を定めておりますが、契約では、これを拡張し、あらかじめ当事者間で、支払遅延等のある特定の事由が生じた場合に、期限の利益を喪失させる旨を合意しておくことが必要です。それが期限の利益喪失条項です。

所有権留保条項

 所有権留保とは、売買契約において、代金の支払いが完了するまで目的物の所有を売主のもとに留保することです。特別の設定契約を締結することはなく、売買契約書の中に、目的物の所有権が買主に移転する時期を買主の代金完済時とする旨の特約を盛り込むことが通常です。これにより、代金の支払いが遅延したり、相手方が信用不安に陥った際に、所有権に基づき、目的物を引き揚げることが可能です。

 ただし、所有権留保の状態にあっても、目的物が取引先から善意(売主に所有権があることを知らない)の第三者に転売された場合は、その第三者は目的物の所有権を取得することができてしまうことから、注意が必要です。

契約解除条項

 相手方に債務不履行がある場合には、法律の規定によって当然に契約を解除できます(法定解除権)。法定解除権以外に、契約書で契約解除条項を定めることによって、相手方に債務不履行以外の事由が生じた場合等に、契約を解除し、引渡済みの目的物を回収することを可能にします。

相殺予約条項

 相殺とは、当事者双方が互いに同じ種類の債務を負担している場合に、双方の債務を対等額だけ消滅させることをいいます。相殺は当事者の一方的な意思表示により行われますが、相殺の予約として、一定の事由が生じた場合、意思表示を待たずに、当然に相殺の効果が発生する旨を契約書に定めたり、相殺の発生を容易にする特約を盛り込む場合があります。

出典:本記事は、『取引先リスク管理Q&A』(リスクモンスター データ工場 著)からの転載です。
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