―― 竹と笹(篠竹)の違いは、皮にある。竹は延びると皮が落ちるが、笹は延びても落ちない。
ひと口に竹といってもいろいろある。学者も困っているようで、成長しても皮がはがれないものを「笹」に分類している。シノダケとも呼ばれるが、これは弓矢の材料になるので、中世の武家屋敷では栽培していた。
小高い山や丘を背にして、付近に川が流れ、笹が密集していたら武家屋敷跡に思いを馳せる。たぶん背後の小山は団地になっているだろうが、かつては四方に小川の水を引き込んで堀とし、堀の内側は土塁(どるい)で囲み、三方に橋を渡した武家館だったかもしれない。
武家館の敷地は広く、中に馬場まであるのだから住宅団地化していれば数ブロックを超える。
竹林というのもある。太い竹林のことだが、これは自然のものはない。古都の風情を忍ばせるものだが、自生地は中国南部からミャンマーにかけてのもので、古くから日本で栽培された。真竹(まだけ)とかクレタケ(呉竹)とか呼ばれる。
「竹取物語」の竹は、この真竹とされる。竹取の翁が生業にできるほどの栽培植物である。
かぐや姫の話には、〝奇跡が起こるほどの渡来植物〟との意味が含まれていたかもしれない。時の天皇をも魅惑する美と富をもたらす珍しさを伝える、と考えるのは間違いだろうか。
間違いであっても、そんなことを発想させてくれるのが、大脳を刺激する散歩の効用ではある。