「退職届」と「退職願」の違いがよくわかりません。社員がどちらを出したかによって、何か違ってくるのでしょうか?
退職の意思を表示するのが「退職届」、伺いを立てるのが「退職願」です。
似たような単語ですが、その法的性質は少し異なります。
退職願とは、法的には「従業員から会社への退職の申込み」です。申込みは会社がそれに対して承諾してはじめて成立します。
退職届とは、「従業員による退職の意思表示」です。
退職について伺いを立てる、懇願するという意味がある退職願と比較すると、退職の決定をただ伝えるという意味と解釈されることもあります。
従業員から退職の意思表示をして行なうのは「辞職」です。
辞職とは、「会社の承諾がない場合でも、民法627条の手続きで、労働契約を終了させることができる」というものです。
「会社に退職の届出をし、会社がその申込みを承諾」すれば、「合意退職」になります。
いつの時点までなら「退職願」を撤回できる?
会社が退職願を受理し、双方で退職日等について合意が成立した段階で、退職願の撤回はできなくなるとされています。つまり、辞職は退職届を使用し、合意退職を求める場合には退職願を使用するのが一般的です。
■退職願と退職届との違い
・合意退職で使用することが多い
・会社の退職に対する承諾があるまでは、従業員から退職の撤回ができる
退職届
・辞職で使用することが多い
・原則、退職の撤回はできない
もっとも、現実には名称にかかわらず、実態で判断されることが多いといえます。また、会社側も従業員側も、概念や法的効果の違いを理解して退職手続きをしていることは少ないと思います。
名称にかかわらず、原則、退職の申し出がなされたときには、合意退職を求めていると捉えたほうがよいでしょう。
※本記事は、月刊「企業実務」(2014年2月号)に掲載した「退職願(届)の受理・撤回等に関する労務問題Q&A」を企業実務オンライン用に再構成したものです。