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風景を読む“知的”散歩術のススメ 第3回

「象」の彫刻は真言律宗の密教寺院の印

[ 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター)]

風景は書物であり、読むものである——ふだん何気なく歩いている場所も、じつは情報に溢れている。ありきたりの風景には、豊かな歴史や人間ドラマが隠れているのだ。

仏典では普賢菩薩の乗物が白象で、牙は6本である。仏の理法・修行を象徴するもので、釈迦像の右側に立つ。左側に文殊菩薩で、こちらは獅子に乗って仏の知恵を象徴する。華厳経で、象は「国家息災」の役割を与えられたが、鎌倉時代後期の寺院の場合は、真言律宗の寺院の山門や本尊として祀られた。真言律宗は鎌倉幕府のもとで、「国家息災」のために港湾を管理して、その船の入津料金を「貧民救済」の資金に宛てた。

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――山門に象の彫刻のある寺院もある。

 仏典では普賢菩薩の乗物が白象で、牙は6本である。仏の理法・修行を象徴するもので、釈迦像の右側に立つ。左側に文殊菩薩で、こちらは獅子に乗って仏の知恵を象徴する。

 華厳経で、象は「国家息災」の役割を与えられたが、鎌倉時代後期の寺院の場合は、真言律宗の寺院の山門や本尊として祀られた。真言律宗は鎌倉幕府のもとで、「国家息災」のために港湾を管理して、その船の入津料金を「貧民救済」の資金に宛てた。

 象の彫り物がある寺院は、それが古く鎌倉時代の真言律宗の密教寺院なので、普賢には延命の意味があり、対になって文殊菩薩の獅子などがあり、その東には文殊浄土にあたる重要な湊などがある。

▼連載「風景を読む“知的”散歩術のススメ」
著者 : 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター) 1949年、神奈川県に生まれる。日本大学芸術学部映画学科で映画理論を専攻。放送作家を経て、『やじうま大百科』(角川文庫)で雑学家に。「万年書生」と称し、東西の歴史や民俗学をはじめとする人文科学から科学技術史まで、幅広い好奇心を持ちながら「人間とは何か」を追求。著書に『「散歩学」のすすめ』(中公新書クラレ)、『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実』(講談社プラスα新書)などがある。
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