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風景を読む“知的”散歩術のススメ 第10回

「笹」が繁茂している場所は武家館の跡?

[ 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター)]

古寺社や古跡の樹木も無意味に植えられているわけではない。それぞれ樹木には、漢文化由来の意味がある。樹木がしめす意味や象徴を考えて風景を見直すと、また新しい発見があるにちがいない。

竹と笹(篠竹)の違いは、皮にある。竹は延びると皮が落ちるが、笹は延びても落ちない。中世の武家は、笹を矢の材料に使ったので、館は笹が繁茂していた。笹が異常に繁茂している場所は、中世の武家館だった可能性もある。竹は地中で根を張るので、地盤の緩い土地に竹林を作ることもある。

  • 笹
  • 笹
  • 竹

―― 竹と笹(篠竹)の違いは、皮にある。竹は延びると皮が落ちるが、笹は延びても落ちない。

 ひと口に竹といってもいろいろある。学者も困っているようで、成長しても皮がはがれないものを「笹」に分類している。シノダケとも呼ばれるが、これは弓矢の材料になるので、中世の武家屋敷では栽培していた。

 小高い山や丘を背にして、付近に川が流れ、笹が密集していたら武家屋敷跡に思いを馳せる。たぶん背後の小山は団地になっているだろうが、かつては四方に小川の水を引き込んで堀とし、堀の内側は土塁(どるい)で囲み、三方に橋を渡した武家館だったかもしれない。
 武家館の敷地は広く、中に馬場まであるのだから住宅団地化していれば数ブロックを超える。

 竹林というのもある。太い竹林のことだが、これは自然のものはない。古都の風情を忍ばせるものだが、自生地は中国南部からミャンマーにかけてのもので、古くから日本で栽培された。真竹(まだけ)とかクレタケ(呉竹)とか呼ばれる。

 「竹取物語」の竹は、この真竹とされる。竹取の翁が生業にできるほどの栽培植物である。

 かぐや姫の話には、〝奇跡が起こるほどの渡来植物〟との意味が含まれていたかもしれない。時の天皇をも魅惑する美と富をもたらす珍しさを伝える、と考えるのは間違いだろうか。

 間違いであっても、そんなことを発想させてくれるのが、大脳を刺激する散歩の効用ではある。

▼連載「風景を読む“知的”散歩術のススメ」
著者 : 古川愛哲<ふるかわ・あいてつ>(フリーライター) 1949年、神奈川県に生まれる。日本大学芸術学部映画学科で映画理論を専攻。放送作家を経て、『やじうま大百科』(角川文庫)で雑学家に。「万年書生」と称し、東西の歴史や民俗学をはじめとする人文科学から科学技術史まで、幅広い好奇心を持ちながら「人間とは何か」を追求。著書に『「散歩学」のすすめ』(中公新書クラレ)、『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実』(講談社プラスα新書)などがある。
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